8月もいよいよ後半になりました。長野県では急に暑さがやわらいで、朝夕はめっきり涼しくなりました。乾いた風にはかなげに響く虫たちの音に秋を感じつつあります。
渓流釣りシーズンの早いところでは9月上旬あたりから禁漁になっていきます。去りゆく夏に思い残すことがないよう、時間を作って渓流へと向かいました。
■過ぎゆく夏、秋の気配が漂う渓へ
この日入渓したのは北アルプス北部の東麓、標高約1,000m付近です。標高の高い山あいの渓に夏が訪れたのは、つい最近のように思っていましたが、いつしか乾いた風が爽やかに吹き抜けるようになっています。気温は24℃でした。秋めいたような気配に夏の終わりを感じ、時間には余裕があるのにそわそわしてしまいます。
山道をしばらく1時間ほど歩き標高を上げた後、斜面を見渡して蔓や笹が少ない(ように見える)ラインで流れへと降りていきます。水はかなり減水していました。ポイントは絞りやすいものの、さぞかし魚たちは神経質になっているだろうと、あまり期待していませんでした。
■夏から秋へ、効果抜群フライ! ロイヤルファミリーってなに??
水温は14℃。石裏には羽化を待つ川虫たちの幼虫が忙しなく動き回っていました。フライボックスにはザ・定番のロイヤルコーチマンをはじめ、前日に巻いたロイヤルの名を冠するフライたちがふんだんに入っています。まず結んだのは“ロイヤルトルード”です。ロイヤルの名を冠したフライパターンはいくつもあります。
なかでも一番有名なのは“ロイヤルコーチマン”でしょう。その起源は1800年代後半に遡り、ウェット、ドライともにフライフィッシングをしていれば使ったことがある、もしくは知っている超有名パターンではないでしょうか。そうでなくても見ればきっと「これか〜!」となるはずです。
どれもボディの赤いフロスが象徴的なフライです。ムネアカオオアリっぽいと捉えることもできる“ライツロイヤル”などの一部を除いて、具体的に何かをイミテートしている感じではないのですが、よく釣れます! 夏から秋にかけて陸生昆虫の活動が活発になるタイミングで僕はよく結び、そして釣果、とくに大物に効果的な気がしています。派手で浮力のあるマテリアルで巻いているので視認性もいいのも、目のかすみ出した中高年にはやさしい……
■出だし好調! 飛び出すイワナには何に見えているのかな
水位が低い分しゃがんで岩陰に身を隠しやすく、フォルスキャストを極力せずに狙った場所へそっとフライを落とします。各ポイントに1匹ずつ、1度で出なくても2度3度流してみると小気味よく水面が割れました。予想外の好反応は、この区間が入りにくくて敬遠されているからでしょうか。
釣果がいいとなかなか先へ進めません。ようやく予定の半分まで来ました。ここから先は林道の終点から入渓できることもあり、今までよりはずっと釣り人のプレッシャーが強くなります。そのせいでしょうか。2〜3匹浮いているイワナが見えても、なかなかフライを咥えてくれません。初投で興味深げに寄ってくるものの、フライの直前でそっぽを向いて帰っていきます。もちろん、ロイヤルファミリー以外のフライも試しましたが、水面が割れることはありませんでした……。
■この日の一番人気は、ロイヤル……
魚がかかる度にフライは濡れます。ふたたび使うには水気を取って乾かす作業がありますが、それよりも交換した方が早い。さらになるべく近い条件でフライをいろいろと試したいのもあって、この日はかなり多くのフライを使ってみました。
ロイヤルファミリーをメインに結びましたが、それ以外も(当然ながら同条件ではないですが)。一番反応が良かったのは“ロイヤルトルード”でした。“ライムトルード”から派生したフライですが、やはり何に見えているのかはわかりません。しかし、抜群の視認性と浮力で、翳った暗いポイントでも楽に漂わせることができました。
反応は良かったもののサイズ的には伸びず、“尺”に届きませんでした。そもそもいなかったのか、それとも暗い岩陰に潜んでじっくりと見極めていたのでしょうか……。
釣りの時間も然ることながら、前日にコツコツ巻きつつほくそ笑んでいるタイイング時間もまた格別です。次はどこの渓へ行こうかな、何を巻いて行こうかな。暑いのは苦手ですが、夏がもう少し続いてほしい気もします。