しとしと降り続ける雨が森に潤いをもたらしています。来たる猛暑に向け、渓に絶え間なく水が供給されるための貴重な水源です。
雨のなかの釣りは気が滅入りますが、家にいても鬱々としてしまいます。溢れだす水に魚たちの警戒心は薄れて、きっとフライに寛容になってくれるはず。普段ならなかなか相手にしてもらえない“スレた”イワナたちが潜む渓へと向かいました。
■そぼ降る雨にしっとりと濡れた渓へ
7月上旬、降ったり止んだり傘を差すか迷う程度の雨のなか、本当に久しぶりに訪れたのは長野県東信地方の端、埼玉県や山梨県との県境にほど近い山中の渓です。
そぼ降る雨に負けじと、小鳥たちはしきりに鳴き交わしています。蝉たちは声を潜めていますが、川面には虫たちもちらほら舞っています。気温は20℃、水温は9.8℃と、この時期としてはかなり低い状況です。はたして雨は味方してくれるのでしょうか。
水嵩はわずかに増していますが、透明度は保たれています。平水よりわずかに勢いを増した流れ。雨は陸との境界を朧げにしています。やや速い流れに、泳ぎが苦手なイワナたちが潜んでいそうなポイントは絞られていきます。まずは、ふんだんに用意してきたアント(アリ)パターンを結びました。
■そこはアプローチのいい激戦区、スレスレのイワナたちとの真剣勝負! ドキドキのフライフィッシング
それにしてもこの渓、イワナがいることは確かなのですが簡単には釣れません。アプローチが良すぎるので、とにかく“スレて”いるのです。
潜んでいるイワナに対し、違和感を覚えさせないような場所にフライを落とし、ドラグがかからないようにそこまで流していく。それを忠実に守るのが第一歩なのですが、なかなか難しいです。というもの、ここのイワナたちは人影に敏感すぎるのです。かなり距離があっても、こちらが確認するより早く察知され、イワナたちは爆速で逃げ去っていきます。
フライラインどころか、リーダーにすら反応されてしまうので、うかつにフォルスキャストもできませんし、ロッドを振る動作ですら勘づかれてしまうことも。山あいの渓としては開けている方ですが、木々の枝や草も茂っているのでキャスティングにも制限があります。
条件さえ満たせば雨のおかげか活性は高く、いたるところから飛び出してきます。過去一番魚影が濃く感じたのは、やはり雨のおかげなのでしょうか。
しかし、直前で見切っているのでしょう。フッキングせずに空振りしたり、掛かっても浅くすぐに外れたりと、なかなか気を持たせてくれます。そして一度でも飛び出してくると、たとえハリに触っていなくても二度と顔を見せてくれません。
それでも、数回に一度はなんとかネットまで導くことができました。潜んでいる生息環境も反映しつつ地域差もあって興味深いのですが、白い斑紋白点と側線下部の橙点が目立つ魚体にやや黄味を帯びたヒレ。このエリアの特徴をしっかりと受け継いだニッコウイワナでした。