4月16日、志賀高原漁協が管轄する「雑魚川(ざこがわ)」での渓流釣りが解禁となりました。長野県内では2番目に遅い解禁です。ほとんどの支流を禁漁とすることで美しい原種イワナたちが息づいており、モデルケースとして全国的にも注目されています。解禁当日、標高1,400m付近ではまだ多くの場所が雪に覆われていました。雪解けの流れに潜むイワナを狙ってフライフィッシングに出かけてきました。
■志賀高原から流れ出す雑魚川は天然魚オンリー
長野県北部にある山ノ内町、日本有数のスキーリゾートである志賀高原から流れ出すのが、雑魚川です。高標高のブナの森に囲まれた美しい流れ。(盛期は)林道沿いとなるため、入退渓もしやすい川です。
魚影を維持するために川への放流(卵・稚魚・成魚)に頼らざるを得ない漁協が多い中、ほとんどの支流を禁漁区・種沢とし、魚たちは自然繁殖を繰り返しています。そこからの“しみ出し効果”によって、まさに持続可能な釣り場となっています。放流なしの天然、原種イワナのみが釣れる、いつまでも残したい貴重な環境です(管轄は志賀高原漁協)。漁協や釣り人が定期的に入ることで、イワナを含めた自然環境の変化にも気づくことができます。
雑魚川のイワナは見た目も印象的です。鮮やかな橙点が体側に散りばめられ、腹部の黄色も艶やか。華やかで煌びやかな魚体が目を引きます。筆者自身も雑魚川の魅力に魅せられて早30年あまり、年に数回ですが通い続けています。
■黄金色に輝く雑魚川のイワナ!
朝8時、奥志賀林道ゲートに近い標高1,400m付近の気温は7℃、水温は4℃を割っていました。雪の量は平年よりやや少なめですが、去年よりは多い印象です。水量は2日前に様子を見に来た際より幾分減って、場所を選べば渡渉も可能でしょう。
川へと降りる斜面や岸を覆う雪は早朝でもすでに緩んでいて、脛まで埋まります。油断していると踏み抜くので、怪しい場所は慎重にゆっくりと進み、流れに立ちました。
雪に覆われた岸際、流れの弛みにウェットフライを結んだラインを伸ばします。手前にゆっくりと引き寄せてきたラインがわずかに抑え込まれるような動きをしました。すかさず合わせると、鈍く震えるような感触が手元に伝わってきました。強い流れに引き込まれるようにロッドが大きく曲がります。「大物だ!」そう思い、ロッドを掲げながら魚を下流へ誘導しつつ、筆者自身も河岸に沿って下っていきます。さながら、不朽の名作『リバーランズスルーイット』のワンシーンをイメージしてしまいます。激しい流れから見え隠れする魚影は黄金色に鈍く光っています。無事にネットに取り込んだイワナは、実は大騒ぎするほどのことはない25cmほどの体長でしたが、今シーズン初の雑魚川での嬉しい一匹に、つい口元が緩んでしまいます。
一般的に生息環境に合わせた体色となるイワナですが、ヤマメやアマゴより派手なのでないかと思うほど艶やかな色合いで、特に腹部の黄色が強く、体側の斑点も目を惹く美しさです。
ルアーの同行者とフライフィッシングの筆者共に、それぞれ5匹ずつくらいでしょうか。道具の違いから狙うポイントや流し方が違うので、お互いに前後しながら、ときに流れに立ちこみつつも雪の残る川岸伝いに遡行しました。
そろそろ退渓予定の地点が近づいてきました。ダウンで流したフライをゆっくりと引いてくると、流心脇の底石から黄金色の魚影が浮上してきました。タイミングが合わずにフライをピックアップ。もう一度、同じコースをゆっくりと流すと、今度はうまくフライを咥えて反転する姿が見えると同時に力強い手応えを感じます。低水温とは思えないくらい元気な引きに釣り欲は十分に満たされました。