鹿児島県本土と沖縄本島のほぼ中央に位置する亜熱帯気候、東シナ海に囲まれた奄美大島。海の生物はもちろん、島の多くを占める豊かな森林も多様性と希少性を併せもっています。
秋雨前線がかかり、断続的な雨が降り続けた10月下旬。「先週はずっと天気良くて暑かったんだけどな……」と申し訳なさそうに島の人に言われ続けながらも、筆者にとって初めての奄美大島トリップを楽しんできました。
■特殊な環境が生みだした生態系! 希少な生物の宝庫
空港から外に出ると、いきなり濃密な蒸した空気に包まれました。雨が上がったばかりのようです。聞いたことのないセミの声に南国に来たのだと実感させられつつ、季節が戻ったかのような不思議な感覚です。
翌日も天気予報通りのぐずついた空模様でした。まず訪れたのは、島の北東部にある「奄美群島国立公園ビジターセンター」と「奄美自然観察の森」です。ビジターセンターに寄ってこの土地に息づく生き物たちの情報を仕入れ、それから森へと向かいました。
気温は26.8℃。小雨が降ったり止んだりの天気。鬱蒼と茂る森の木々に遮られて雨具がいらないくらいでしたが、あまりの湿気にカメラのレンズが曇ります。見慣れない植生が興味深くキョロキョロしていると、散策路を塞ぐようにオオジョロウグモが大きな巣を張っていました。日本で最大の大きさと言われるだけあって、なかなかの貫禄です。
ツマベニチョウがヒラヒラと忙しなく飛んでいます。南国に多いこの蝶は、奄美ではとくに多いようで、滞在中に何度も見かけました。飛んでいる時は白と翅先の紅が鮮やかで目立ちますが、翅を閉じると葉っぱに見事に擬態しているようで、見失ってしまいそうです。
今回、島北部にあるホテルに泊まっていたのですが、この敷地でも数多くの生き物たちに出会えました。海のすぐそばで、潮騒と鳥たちの歌声(残念ながら判別できず)をBGMに過ごしていると、何種類かセミが賑やかに鳴いています。唯一聞き分けられたのはクロイワツクツクでしょうか。鳴き声はツクツクボウシとは違うようでいて「ツクツクボウシ」の鳴き声がわずかに入り混じるような不思議な感じ。
とくに明け方には昆虫、生き物たちを見つけることが多く、毎朝、散策がてら観察して歩くのが楽しみで、つい早起きしてしまいます。クワガタが計10種類もいるそうですが、アマミノコギリクワガタとアマミヒラタクワガタは写真に撮ることができました。