10月も終わろうとしています。渓流魚(トラウト)を対象とした本州のほとんどの自然渓流は禁漁時期を迎えます。「一年中釣りができたら」 ついそう思ってしまうアングラーも多いはず。

 そんな中、自然渓流の堰堤間を区切って「特別区」として一年中釣りが可能な場所があります。富士山の麓、静岡県富士宮市の西側を流れる芝川の特別区キャッチ&リリース区間でフライフィッシングを楽しんできました。

■一年中釣りができる! 「芝川観光非出資漁業協同組合」が管轄する芝川の特別区キャッチ&リリース区間

「田中屋」で受付をします。簡易郵便局であり、日用品や雑貨を扱う商店でもあります

 芝川は富士の裾野に端を発し、富士宮市の郊外で富士川へと注ぐ約22kmの流れで、途中には「音止の滝」や「白糸の滝」といった観光名所もある風光明媚な川です。

 「芝川観光非出資漁業協同組合」が管轄する芝川の中で、久保大橋上流〜西山堰堤までの間は特別区となっています。約1kmほどがキャッチ&リリース区間となっているのですが、なんとここは禁漁時期がないのです。つまり一年中釣りをすることができます!

 区間内の下流部は里川の風情ですが、上流へ釣り上がると谷が狭まり渓流の感が強くなります。ニジマスは40cmを優に超える大物が数多く放流されているのも魅力です。

 朝方はずいぶんと冷え込み20℃を下回っておりましたが、水温は15.1℃で湧水の川ならではの温かさでした。数日前まで降っていた雨の影響でしょうか、水量は多く勢いがあります。それでも流れの透明度は高く、日差しが入る頃になると流れの中をゆらめく魚体が見え隠れして、その姿を見守っているだけでもワクワクします。

透明度の高い流れ。渓に徐々に光が差し込むと水中の様子もよく見えます

■いきなり一本目から大物!  猛烈なダッシュと底なしの体力に完敗

開始早々バラした大物の後に釣れた一本。それでも十分に満足いくサイズではないでしょうか

 (区間下流から)一番目のプールは数人グループでフライフィッシャーが楽しんでいたので、声をかけて上流の二番目のプールへと向かいました。開始早々、鈍いアタリとともに魚が掛かりました。

 最初こそ余裕がありましたが、本気で走り出したニジマスはコントロールできる範疇を超えています。徐々にとんでもない大物だと気づきました。水量が多めだったために迂闊に下れず、ほとんど移動できないままリールファイトを続けますが、一定距離以上には寄せることができません。ニジマスは弱ることもなく強烈に走り、むしろ釣り人の体力が削られていきます。気づくとランニングラインも終わろうとしています。最後ははるか下流の瀬の中にまで逃げ込まれてハリが外れました……。

 その後、なんとか50cm台のニジマスをキャッチして溜飲を下げることができました。放流された魚とはいえ、自然の流れに馴染んだ魚体は健康的で美しさを感じます。釣ったりバラしたりを繰り返しながら少しずつ上流へと移動していると、遠くから雄叫びやら絶叫やら聞こえてきました。下流に入っているルアーマンでしょう。彼らも楽しんでいるようです。どうやら魚たちの活性が高い、“当たり”の日のようです。