長野県の河川での渓流釣りは2月16日に解禁する場所が多いです。それから遅れること2か月、県内でも遅い解禁を迎えるのは志賀高原漁協が管轄する「雑魚川」です。
解禁日の前日は雨でした。当日の朝も長野の自宅から見た志賀高原は厚い雲のなかで、コンディションが気になります。この時期は雪代もあるので、水量が増えやすいのです。かなり迷ったのですが、釣りは翌日(17日)にすることにしました。
■日本を代表するスノーリゾート志賀高原を流れる雑魚川の天然、原種イワナ
長野県北部にある山ノ内町、日本有数のスノーリゾートである志賀高原の中央部を源流にしているのが雑魚川です。
放流なしの天然、原種イワナのみが釣れる貴重な環境で、全国的にも注目されているフィールドです。管轄している漁業協同組合「志賀高原漁業協同組合(漁協)」による、釣り場環境を維持するための活動がモデルケースとしても注目されています。ほとんどの支流を禁漁区・種沢としており、魚たちは自然繁殖を繰り返しています。そこからの“しみ出し効果”によって、持続可能な釣り場となっています。
筆者も30年ほど通っていますが、コンディションさえ悪くなければ常に魚が顔を見せてくれています。流れに沿うように車道が通っているアプローチ抜群の場所、しかもキャッチ&リリース区間でもない一般渓流で、これは特筆すべきことでしょう。
遊漁料金はリーズナブルで、日釣りは550円! 道中のコンビニや志賀高原のいくつかのホテル、さらに「フィッシュパス」と「つりチケ」でも購入できます。無券での釣りは違法ですので、購入したうえで釣りを楽しみましょう。
注意したいのは“体長制限”です。遊漁規則で20cm以下の魚を捕獲・所持してはいけないルールがあります(他の漁協の制限に比べると基準が大きいので要注意)ので、釣りに行く前に確認しておきましょう。
■雪は少ないけれど低水温! 遅い春を迎えた高原の渓
まだまだ営業中のスキー場を横目に「奥志賀高原」を目指します。例年であれば雪を踏みしめながら雪代で勢いのある流れのなかでの釣りになります。しかし、この冬は少雪だったおかげで、すでに雪を踏み抜く心配をせずとも釣り上がることが可能でした。
林道「奥志賀高原栄線」は奥志賀高原スキー場前のゲートで冬季閉鎖中(秋山郷までは20206年5月15日、14時開通予定。要確認)です。テントが張られており、管轄する「志賀高原漁協」の組合員の皆さんが集まっていました。
当日の天気は晴れでしたが、やや高曇り気味で、その分朝の冷え込みは緩く、1日を通しての温度変化も予報よりは少なさそうです。9時の標高1,450m地点の気温は8℃で、水温は4.9℃とかなり低めでした。
■活性は低かったけど、活きのいいイワナたち
しばらく下流方面へ歩いてからお気に入りの場所に入渓します。解禁日から1日ずらしたのも良かったのでしょう。かなり水嵩も落ち着いており、コンディションは申し分なさそうです。
人影はありませんが、わずかに残った雪の上に足跡があることに気がつきました。釣りを始めて2時間、まったく反応がありません。しかし、先行者に関わらず解禁当初の低水温時にはよくあることです。
落ち込みを狙って沈めたフライが吐き出されたので、そのまま流れに乗せてから駆け上がりでゆっくりとターンさせた瞬間でした。川床の一部が分離したかと思うと、魚が浮上してきました! そのまま浮き上がったフライを咥える一連がスローモーションのように脳裏に残りました。
実はこの直前に2匹掛けていたのですが、最初の1匹はネットから溢れて流れのなかに消えていきました。その次はシャッターを切る前に逃亡……。この1匹も数枚シャッターを切ったところで「はい、おしまい!」と言わんばかりに身を翻して岩の隙間を抜けていきました。
■今年も出会えた天然、原種イワナ
パーマークが目立つ魚体は、まるでヤマメのよう。いや、体側に散りばめられた朱点はアマゴの方が近いでしょうか。艶やかでありつつも透明感あふれる瑞々しい魚体は目が覚めるように美しく、そして目立ちます。なぜ、ここまで派手な必要があるのかと思ってしまいます。
顔を見られれば上出来、誘ったフライに追いすがるように魚体がゆらめくだけも嬉しい。20cm以下のために写真を撮らず(撮影も採捕に該当する)にリリースした魚もいます。小さい方がガラス細工のようにさらに繊細で、その麗しさは際立つような気がしました。
ここは林道が脇を走るアクセスのいい高原リゾート地です。放流もされておらず、キャッチ&リリースでもなく、それでいて元気な原種イワナたちが数多く泳ぐ川。筆者が訪れるようになってからでも30年あまり経ちますが、特徴的な魚体は健在です。
変わらぬイワナの姿に、すぎ去りし日の思い出、若い頃の釣行も一緒に思い出します。若い頃、渓流ではエサ釣り、もしくはルアーフィッシングでした。映画『リバー・ランズ・スルー・イット』を観てフライフフィッシングに憧れていましたが、実際に始めるのには時間がかかりました。当時の自分が今の僕を見たらどんな風に思うでしょうか。相変わらず釣りに夢中なことに呆れてしまうかも……。そんなことを思いながら、ところどころにこびりつくように雪が残る斜面を上がり釣りを終えました。
これから渓流シーズンも最盛期へと向かっていきます。夏でも涼しい志賀高原。爽やかな緑に包まれた渓での釣りは、きっと癒しのひとときをもたらしてくれるでしょう。モンカゲロウが舞う頃、また訪れようと思っています。
※ ゴミの持ち帰りは当然ですが、他の渓流同様、外来種の「ミズワタクチビルケイソウ」の繁茂も懸念されています。解禁当初の水温、水量では一見すると気になりませんが、夏になるとかなり目立つ年もあります。違う川へ移動するときはとくに、靴やウェーダー、ネットなどの道具の洗浄を入念にしたいものです。