3月に入り渓流釣りが解禁となった川が増えました。2月中旬から釣りができる河川が多い長野県ですが、例年以上に雪が多くて、なかなか釣りに行けるコンディションではありません。

 暖かく一気に春めいた週末、積雪量が多い北信(県北部)から逃げるように南信地方へフライフィッシングに出かけてきました。

■ワクワクの解禁日!

伊那市郊外から南アルプスを望む。東西に聳える南、中央アルプスに挟まれた伊那谷

 長野県のほぼ真ん中にある諏訪湖から流れ出した天竜川は、東西それぞれを南アルプス、中央アルプスに挟まれた伊那谷を流れます。途中、「川下り」でも有名な名勝地「天龍峡」を経て、静岡県で太平洋に注ぎます。その上流部「天竜川漁協」が管轄するとある支流を目指しました。

 里にはすっかり雪はなくなっています。実はこの前日、中央アルプスを挟んだ反対側の木曽川で釣りをしました。管轄する「木曽川漁協」はその日が解禁日ということで多くの釣り人に出会いましたが、釣果はあまり振るわないよう。そこで人がほとんど入らないような山奥の渓へ向かったのですが、雪も多く昼間でも水温は0.4℃とあまりに低くて諦めてすごすごと引き返しました。

 その夕方に思い切って峠を越えて(トンネルを抜けて)天竜川支流へと向かいました。流域は2月中旬に解禁しているのですが、こちらの方が土地勘もあり、雪の影響が少ない場所にも検討がついています。果たして釣果のほどは……。

■一匹でもいい! どうにか渓流魚を手にしたくて

例年より多く雪の残る渓。防寒対策を入念にしていたおかげか、ウェーダー越しの水にはそれほど冷たさを感じませんでした

 雪の消えた林道を走り、車を停めたのは朝8時。気温は8℃です。そこから山道を1時間半ほど歩いて、入渓ポイントを目指しました。日当たりのいい場所は乾いていますが、北斜面にはこびりつくように固くしまった雪が残っています。

 夏場はよく訪れる渓ですが、この時期に訪れるのは初めてです。春の日差しは暖かく明るい景色が広がっています。しかし、いまだ色彩に乏しい森は荒涼としていて、どこか不気味さも感じてしまいます。期待と不安が入り混じる初デートに向かうような心持ち。いち早く筆者の気配を察したサルが吠える声が神経質になった心を逆撫でするようでした。

 緩やかな残雪の斜面を降りて河原に立つと、ほてった体にひんやりとした渓の風が吹きつけます。夏場の平水よりやや水量は少なく水温は2.6℃。前日よりマシですが、やはり冷たいです。今日も厳しい釣りとなるのでしょうか。