早いもので5月も終わろうとしています。山の緑も色濃くなり、初夏へと移り変わっていく季節ですね。
両白山地の東側、岐阜県北西部は日本の原風景を彷彿とさせてくれる景色が魅力の地域です。同時に緑豊かな自然が残る一帯には清流が幾筋も流れ、渓流魚たちが脈々と息づいています。雪代が混ざる新緑の渓へフライフィッシングに訪れました。
■ウェットウェーディングで臨む雪代の渓

実は今回は、シーズン初のウェットウェーディングスタイル(防水性のあるウェーダーなどを履かずに水に入ること。当然濡れます)での釣行でした。入退渓までのアプローチでかなりの距離を歩くのと、5月なのに真夏のような暑さになる予報だったからです。
しかし、朝歩き出し始めるときの気温は16℃と肌寒く、いささか不安になります。歩いているときは心地よかったですが、目的の渓へと下っていくと山の陰には雪がこびりつくように残っており、雪代が混ざった水が勢いよく流れていました。
実は前日まで使っていたウェーダーのポケットに温度計を入れっぱなしにしてしまっていて正確な水温はわかりませんが、指を入れるとかなり冷たい(おそらく10℃以下)。しかも携行しているのはドライフライメインのボックスです。果たして魚たちは反応してくれるのでしょうか。
■フライを咥えようと一生懸命飛び出してくれる魚たち

青白い水が滔々と流れていました。流れに足を入れると、最初こそ平気なもののフライを何度も流しているうちに冷たさが沁みてきて、まるで冬の本流釣りのようです……。食いが渋いようなら引き返して違う渓へと向かうことも考えていたのですが、比較的早めに小ぶりながらイワナが釣れ、そのまま釣り上がることにしました。
しかし、最初の一匹を釣った後はなかなか反応が得られません。しばらく経ってようやくピックアップ寸前に顔を出したイワナが! そのまま流し続けますが、すでにドラグがかかっていてフライのスピードが上がっています。それでも2度3度と追い縋って口をパクパクさせている様子が微笑ましく、水の冷たさも忘れて愉快な気持ちにさせてくれました。
さらにその先では、勢いよく飛び出したけれど目測を見誤って食べ損なったのか、大きくバク宙して背中から水面に落ちていたイワナも……。

大きめの淵の脇の反転流に乗せてフライを流していると、勢いのいい流れのなかから大きく口を開けた魚が飛び出してきました! 頭でっかちだったとしても尺(約30.3cm)を超えています。しかし一瞬ハリ先に触れた手応えはあったものの、フッキングせずに魚は消えていきました。手元に残る大物の感触と厳つい顔の残像が、頭にこびりついて離れません。しばらくロッドを振る気にもならずに呆然とさせられました。