本州に先駆け紅葉の季節となっている北海道。言わずと知れたトラウトパラダイスでもあります。一部を除き渓流釣りの禁漁時期がないため、この時期になると本州から多くの渓流釣りフリークが訪れます。

 数日間の釣り旅を終えて、後ろ髪を引かれつつも帰路につく日、大都市、札幌の郊外の渓でフライロッドを振ってみました。

■大都市、札幌市郊外の渓へ

平日の朝、市街地の渋滞を抜けて札幌自動車道へ

 北海道釣行最終日、帰りのフェリーが夕方だったため、半日は釣りをする時間がありました。観光をして過ごすことも考えましたが、本州に帰っても待っているのは“禁漁”の二文字。せっかくなのでダメ元で釣りをしてみることにしました。

 前夜宿泊したのは札幌市で、北海道の人口が集中する200万都市です。大きく移動するのは憚られたので、その郊外である「定山渓(じょうざんけい)」方面へと向かいました。“札幌の奥座敷”として親しまれている温泉地ですが、地形図を眺めていると有望そうな流れをいくつか見つけました。筆者はこのエリアで釣りをしたことはなく、いい機会だとダメ元で訪れてみることにしました。

■深山幽谷の趣、ヤマベとウグイが交互に釣れる

秋の日が優しく降り注ぐ流れ。こんな中でロッドを振るだけでも幸せ

 入渓したのは2車線の道路に沿った川。ヒグマの生息する場所だけに頻繁に車が通るのがありがたいです。腰元に装着したクマ避けスプレーを確認しながら流れを確認すると、10.6℃と申し分のない水温です。暖かい秋の日差しが優しく降り注ぐ渓を色付きだした森が明るく包んでいます。川岸の草むらにはバッタやアリなど陸生昆虫を見かけ、川床の石には水生昆虫たちも豊富です。環境は良さそうですが、あまりに入渓しやすいので(本州感覚では)おそらく魚影も薄く、釣り人のプレッシャーでスレているだろうと予想していました。

可愛らしいエゾウグイ。成長するとかなり大型になります

 半信半疑ながら瀬にフライ(アントパラシュート)を流すと、いきなり水面が割れました。慌てて合わせて引き寄せると小さなヤマベ(ヤマメ)でした。さっそくの釣果に顔が綻びます。気分を良くして釣りを続けると今度はエゾウグイがかかりました。トラウト狙いとしては“外道”ですが、今回の釣り旅では一度も出会っていなかったので、なんだか少し嬉しいです。