日が暮れるのが早くなってきました。急に涼しくなると寂しくなって「もう少し夏が続いてほしい」と言い、暑さがぶり返すと「早く涼しくならないかな〜」などと思ってしまいます。そんなことを繰り返しているうちに秋になったことを自然と受け入れていくのでしょう。

 この時期になると、渓流釣りのシーズンも残りわずか。コンディションのいい日に都合をつけて、どうにか釣りに行く時間を捻出するのに勤しむ釣り人も多いでしょう。

■上野村漁協が管轄する神流川とゾーニング

緩急のリズムを刻みながら森を流れる中ノ沢。当日は水が多く、流れもやや速めでした

 筆者の住む長野県から峠を越えて群馬県へ。目指したのは上野村漁協が管轄する神流川です。神流川の上流部は群馬県の南西部を流れ、やがて利根川へと注ぎ込みます。水質的にも見た目にも美しく澄んだ流れが特徴で、関東一の清流と称されています。

“毛ばり釣り専用区”は予約制、人数限定の特別な区間です

 上野村漁協は積極的にゾーニングをしており、数か所キャッチ&リリース区間が設けられている他に“毛ばり釣り専用区”として予約制、人数限定の特別な区間も用意されています。その名称通り、釣法はフライフィッシングテンカラのみとなり「本谷(ほんたに)」と「中ノ沢(なかのさわ)」の2つがあります。今回は中ノ沢を予約していました。

各入渓ポイントには、階段やスロープで川までの道が切ってありますので安心です

 川そのものは自然渓流ですが、各入渓ポイントには、階段やスロープで川までの道が切ってあります。車道に沿っていますので、釣り上がった後は舗装路を歩いて戻れます。特に初心者には何かとハードルが高い渓流釣りですが、新たに始める方にも安心できる釣り場だと思います。程よい管理具合ですので心地よく過ごせます。当然、遊魚料金は他のエリアより高い設定となりますが、その価値を考えるとリーズナブルではないでしょうか。

上野村漁業協同組合

■ストーキングが要! 「毛ばり釣り専用区」中ノ沢へ

とにかくストーキングが要の中ノ沢での釣り

 中ノ沢の“毛ばり釣り専用区”では放流をしていません。沢育ちのヤマメイワナたちは警戒心がかなり強く、いかにそっと釣りをできるか肝心なようです。

 「川の駅 上野」内にある漁協の事務所で受け付けを済ませたら、車に乗って釣り場へ向かいました。ミンミンゼミが鳴いていますが、覇気がなくどこか投げやりな感じです。気温は20℃、水温は15.7℃。やや水嵩を増した流れは生き生きとしており、いい釣りができそうで期待に胸が躍ります。

 そんな筆者をさっそく歓迎してくれたのはアブたちでした。準備している最中から周りを飛び回り、隙あれば噛もうとしてきます。まだ夏は終わっていなかったようです。

 まずは流れを観察してみます。反転流を素早く横切る影。魚にしては泳ぐラインが変だなと思ったら、カワネズミでした。岸に上がったら、また素早く水のなかへ。カメラを構える暇もありませんでした。いつか写真に収めたい。神流川流域ではよく見かけます。

緑の反射がまばゆい流れ。陰に潜みながらそっとラインを伸ばしました
緩やかな流芯から水飛沫を上げてフライを咥えたヤマメ

 忍者のように岩陰や藪に身を隠したり、開けた場所では身を低くしたりしてストーキング。ラインをそっと伸ばします。貸し切りだからいいものの、かなり怪しい釣り人ですね。

 慎重なアプローチが功を奏したのか、さっそく水面が割れました。小さいながらも渓の色合いを写し取ったかのような美麗なヤマメ。その後も飽きない程度にヤマメたちが飛び出してきます。ハイウォーター気味ですので、魚影もほとんど確認できませんが、その分魚からもバレにくいのでしょうか。

 やがて曇っていた空に晴れ間が広がり出しました。気温は25℃になり、湿度が高いせいかかなり蒸し暑いです。明るい色の中型のカゲロウが舞っています。わずかにくすみ出した森の色に、ついこの間見たような気がしている新緑の頃を思い出します。本当に季節が過ぎるのは早いものですね。

 いざ晴れると渓は一気に華やぎます。そして透明度を増した水に、あらためて魚影の多さに気づかされました。ライズがあるわけでも、表層に浮いているわけではありません。流れのゆらめきの隙間からわずかに見える違和感。おそらく渓流釣りをしない人なら、けっして気づくことはないでしょう。

 多いだけではなく、なかには尺前後の良型ヤマメもちらほら見受けられます。しかし、その濃さが仇になり、迂闊に前進することもロッドを振ることもできなくなってしまいました。1匹でも走れば、伝播してそのポイントは釣れなくなります。ラインの影でも走られるので、不用意にフォルスキャストもできません。ポイントに応じてキャストを工夫して、二度ほど良型が飛び出してくれましたが、寸前で見切られているのでしょう。フッキングには至りませんでした。

日陰になった反転流から飛び出してきたイワナ

 途中、日陰の反転流でイワナも釣れましたが、サイズは伸びません。躍起になって釣り続け、けっきょく昼ごはんも食べずに終了の時間となりました。

 首都圏からも遠くないアプローチのいい渓です。予約制のキャッチ&リリース、入渓する人数を限定することによって、放流しなくてもこれほどまでに数多く渓流魚たちが泳いでいる環境。いまや貴重な存在でしょう。