朝晩こそ若干涼しくなってきたものの、依然として猛暑が続いていますね。

 渓流釣りシーズンも残すところ、1か月を切っています。忙しなく鳴くツクツクボウシの声に、どこか急かされるような気がしてしまいます。

※ 河川や漁協によりますが、本州ではイワナヤマメなどの渓流魚は9月中に禁漁となる釣り場が多いです。

■藪漕ぎ&草いきれにぐったり

草いきれで猛烈な蒸し暑さの藪漕ぎ。これでも足元はしっかりと踏み跡になっています

 長野県北部小谷村の山中にあるお気に入りの渓。例年なら何度も足を運ぶ場所です。しかし今季はなかなかコンディションに恵まれず、最後にその渓に訪れたのはまだ雪代が混ざる頃でした。早いもので、もうシーズン終盤です。

 林道から離れた深い谷間なうえに、高い堰堤がいくつも行く手を阻むので下流から遡行しても上流部へはなかなか到達できません。山の斜面を藪を切り開くように下って入渓するのが最善のアプローチとなります。

 真夏となり鬱蒼と茂った薮は、わずかに残っている踏み跡をすっかり覆い尽くしています。何年も通っている場所なので道は覚えているのですが、見た目には足を踏み入れる隙間もないような有様です。足の感覚で踏み跡を辿っていきます。

 笹やススキをかき分けているときはいいのですが、葛などの蔓が繁茂しているなかを泳ぐように進んでいるとペースも落ち、草いきれの蒸し暑さにすっかり参ってしまいました。

 気温こそ31.5℃ですが、まるでサウナのようです。河原へ降り立ち、まずは水温を測りながら流れのなかへどっぷりと浸かってクールダウン。15.6℃の水が心地よく体を冷やしてくれました。

■入渓早々、良型イワナが迎えてくれた!

 しばらくまとまった雨が降っていなかった渓は、すっかり水が減っていました。広くなった河原を細い流れが控えめに流れています。

 慣らしがてら数回フォルスキャストをしてラインを伸ばし、期待せずにフライを落とすと、いきなり水面が割れました。慌てて合わせると、なかなかの良型です。白斑が円形に近く、どこかアメマスを彷彿とさせる風貌でした。正真正銘、一投目から魚が釣れたことにびっくりです。

緑濃き夏の渓。右奥の日陰なっている流れに尺イワナが潜んでいました
数回シャッターを切っただけで逃げ去っていったイワナ。発達した尾ビレが印象的な魚でした

 次のポイントへ。岩壁に沿った日陰の流れ込みにそっとフライを漂わせてみると、激しい水飛沫があがりました。尺超えの32cmです。雰囲気は良かったものの、かなり浅い場所です。今日はどうしたことでしょう?

 カメラを取り出してシャッターを数回切ったところで、勢いよくネットから流れのなかへ帰っていきました。もう少し写真も撮りたかったし、眺めたかったのですが……。

 その先の支沢の合流点でさらに丸々とした良型を追加し、あまりの好調に若干怖くなってきました。

 けれどもその心配は杞憂に終わったようです。どうしたことでしょう。魚信が急になくなりました。むしろ上流に進むほど好ポイントが続き釣果の実績もあるのですが、たまに浮上してくる魚影は見えるものの、フライを咥えようとはしません。

 河原に足跡が少し残っているのに気がつきました。しかし、左岸は崖、右岸は急な藪の斜面が続いており、容易には入渓できない場所がずっと続いています。急に現れた釣り人の痕跡と、明らかに渋くなった魚たちの反応に困惑します。どこかにいい抜け道があるのかな?