夏になると、茨城県を流れる涸沼川(ひぬまがわ)には、手軽に楽しめるテナガエビ釣りを目当てに多くの人が訪れる。長さ2mほどのノベ竿にシンプルな仕掛けで挑戦できるため、初心者や子ども、家族連れにも人気の高い夏の風物詩だ。

 涸沼川の魅力は、20cmを超える手のひらサイズのジャンボテナガエビがいること。他の釣り場ではなかなか出会えない大型サイズとの駆け引きを楽しめ、持ち帰った後は定番のから揚げで味わえるのも大きな魅力。

 今回は、テナガエビシーズンに入った涸沼川を訪れ、テナガエビ釣りを楽しんできた。当日の様子とともに、初心者にもおすすめの仕掛けや釣り方、釣ったテナガエビをおいしく味わう方法を紹介する。8月の好シーズンに向けたテナガエビ釣りに、ぜひ挑戦してみてほしい。

■大型も狙える人気スポット 涸沼川は夏のテナガエビ釣りの好フィールド

涸沼川は茨城県を流れる一級河川。テナガエビの人気釣り場として知られている

 今回訪れたのは、茨城県を流れる一級河川・涸沼川。関東唯一の汽水湖である涸沼(ひぬま)から那珂川(なかがわ)へ合流し、その後すぐに太平洋へと注ぐ河川で、河口から涸沼までのおよそ8km区間は海水と淡水が混じり合う汽水域となっている。

 この独特の環境には海と川の両方から豊富な栄養が運ばれ、テナガエビのエサとなる生き物や藻類も豊富に育つ。そのため涸沼川ではテナガエビの成長が良く、時には20cmを超えるジャンボサイズが釣れることでも知られている。

涸沼川で見られる伝統のシジミ漁。汽水域にはテナガエビをはじめ、多くの生き物が暮らしている

 水温が20~30℃になると活発にエサを追う涸沼川のテナガエビは、シーズンとなる5~10月の中でも6~8月は数釣りと大型狙いの両方に期待がもてる最盛期となる。

 テナガエビは夜行性で、日中は護岸沿いに沈んだ消波ブロック(通称、テトラポッド)や捨て石など、水中にある障害物のすき間や陰に身を潜めていることが多い。そのため、こうしたポイントを丁寧に探ることが釣果への近道。

 また、潮の動きも重要な要素で、満潮・干潮の潮止まりよりも、潮が動く上げ潮や下げ潮の時間帯が狙い目となる。釣行前にはスマホアプリのタイドグラフ(潮汐表)を確認し、潮が動く時間帯に合わせて釣行するとよいだろう。

■根掛かりを減らして初心者も安心 十字テンビン仕掛けの仕組みと使い方

今回使用したテナガエビ天秤(十字テンビン)仕掛け。テンビンは玉ウキの浮力を利用し、水底で立つようにセットする

 テナガエビ釣りでは、障害物周りを狙うことが多いため、根掛かりが悩みの種になる。

 その理由は、テナガエビの習性にある。テナガエビはエサを見つけても、その場ですぐには食べず、ハリごと巣穴へ持ち帰ってから食べようとする。このため、アタリが出てもすぐにアワセず、数十秒ほど待つのが一般的な玉ウキ仕掛けでの釣り方となる。しかし、その間にハリが障害物の奥へ入り込み、根掛かりしてしまうケースが少なくない。

 そこで今回使用したのが、「テナガエビ天秤(十字テンビン)」仕掛けだ。十字形をしたテンビンの左右にハリスを取り付け、テンビン本体が水底で一本足で立つ状態になるよう玉ウキの浮力を利用して使用する。

 玉ウキは水面下数cmに沈むようウキ下(玉ウキから十字テンビンまでの長さ)を調整するのが基本で、この浮力によってテンビンが倒れず、水底で安定した姿勢を保つ。一方、浮力が強すぎるとテンビンが底から浮き上がり流されてしまい、弱すぎると倒れて根掛かりしやすくなるため、適切なバランスとなる大きさの玉ウキを使用することが大切だ。

十字テンビン仕掛けは、玉ウキが水面下数cmになるようウキ下を調整する

 十字テンビンは数gの重さがあるため、テナガエビがエサを持っても巣穴まで引きずっていくことは難しい。その場でエサを食べるしかないため、障害物の奥へ入り込むことが少なく、一般的な玉ウキ仕掛けよりも根掛かりが大幅に減る。

 また、テンビンが固定されていることでテナガエビは自然とハリ掛かりしやすく、釣り人が玉ウキの動きを見ながらタイミングよくアワセを入れなくても釣れる場面が多い。アワセのタイミングに悩む必要が少ないため、初心者や子どもでも扱いやすい仕掛けといえるだろう。

 なお、ハリスはテンビンの脚と同じくらいの長さにすると絡みにくく、エサも底付近を自然に漂わせることができる。根掛かりが少ない仕掛けとはいえゼロではないため、ハリス付きの予備バリは多めに用意しておくと安心だ。

 また、涸沼川では遊漁規則により、一度に使用できる竿は3本まで。まずは1本、慣れてきたら2本と少しずつ増やしていけば、無理なくテナガエビの数釣りを楽しめるだろう。

■十字テンビンで実釣開始 涸沼川で大型テナガエビを狙う

護岸沿いに沈められた消波ブロック帯は、テナガエビ釣りの人気ポイントだ

 筆者が釣りを始めたのは午後1時頃。当日の空模様は曇り時々晴れで、前日までの雨の影響で川はやや濁り気味だった。気温は25℃を超える夏日だったが、終始風が吹いていたおかげで、暑さはそれほど気にならない釣り日和となった。

 今回入ったのは、涸沼川でも人気の高いテナガエビ釣り場のひとつ。平日にもかかわらず多くの釣り人が竿を並べていた。護岸沿いには消波ブロック(テトラポッド)が沈められ、その周囲にはゴロタ石も点在する。筆者もこうした障害物周りを狙うことにした。

 前項で紹介した十字テンビン仕掛けを使用し、実釣を開始。使用したのは長さ2m前後のノベ竿に、重さ5g弱の十字テンビンと玉ウキ、ハリス0.4号付きのエビバリ2号を組み合わせた2本バリ仕掛け。ミチイトは1.5号とし、万一ハリが根掛かりしても切れるのはハリスだけで、テンビンは必ず回収できるようにセッティングした。また、これと同じ仕掛けをもう1セット用意し、2本竿でテナガエビを狙った。

数釣りを楽しむため、十字テンビンをセットした竿を2本用意した

筆者の使用タックル
ロッド:小物竿 長さ2m前後
道糸:ナイロン 1.5号
玉ウキ:7号サイズ
天秤:テナガエビ天秤(十字テンビン)
ハリ:エビバリ 2号、タナゴ 流線 ※根掛かりに備えて予備のハリは必須
エサ:生きたアカムシ(ユスリカの幼虫)

筆者が使用した十字テンビン仕掛けの各パーツ(十字テンビン、ハリ、玉ウキ)
エサはテナガエビ釣りの定番、アカムシ(ユスリカの幼虫)を使用

あると便利な道具
ピンセット:ハリを外す際に使用
エサ入れ:エサが乾燥するのを防ぐ
竿置き:竿を地面に置く際に固定する道具
水汲みバケツ:釣ったエビを生きたまま一時的に入れておく魚入れ
クーラーボックス:エビを生きたまま家に持ち帰るために使用
エアーポンプ:クーラーボックスに入れたエビに酸素を供給するためのポンプ。エビを生きたまま家に持ち帰る際は必須のアイテム
小型アクリル水槽:釣ったエビを横から観察可能
日よけ&日焼け止めグッズ:川岸は日を遮るものが無いため必須のアイテム
虫よけグッズ:夏場は虫が多いため必須のアイテム
手洗い用の水:ペットボトルに水道水を入れて用意
タオル:濡れた手を拭くために使用
ライフジャケット:水難事故防止のため。子どもにも必須のアイテム

釣れたテナガエビやアカムシは炎天下に置くと弱ってしまう。暑さ対策は万全にしたい