信州、長野県南部でも里の桜が散り、あっという間に新緑まぶしい季節がやって来ようとしています。
いよいよ渓流釣りシーズンも本格化しそうです。天竜川漁協が管轄する天竜川の支流、山奥の山岳渓流へとフライフィッシングへ出かけてきました。
■春が訪れたばかりの山岳渓流へ

天気予報では一月以上季節を先取りしたような暑さが見込まれていた日、毎年訪ねる山奥の渓へと向かいました。歩き出しの標高は920mでちょうどソメイヨシノが満開でした。
山道を歩くこと約2時間。水平移動が長かったために標高は200mほどしか上がっていませんが、ここまで来るとそう頻繁には釣り人はやってきません。斜面にはゼンマイが顔を出し、林床には可憐な花々が彩りを添えています。

雪解けしたばかりで浮石の多い斜面を慎重に下り、猫の額ほどの河原に立ちました。日陰にも雪はもう跡形もありません。気温は13℃で水温は8.7℃です。さっそくブヨたちがまとわりついてきました。シーズン初めはこれとても、どこかウキウキしてしまう気持ちがあります。
■今日は定休日? 営業開始前? 魚はどこにいる?

連続するポイントにはどこでもイワナが潜んでいそうです。胸を躍らせロッドを振ります。しかし、先行者はいないようなのに一向に魚信を得られません。首を傾げ、一抹の不安を感じながら釣り上がっていきます。
釣りの集中力が切れかけ、つい雑に足を水のなかに入れると、足元から黒い影が水中を走っていきました。すると悪態をつく声が聞こえてきました。先をいく同行のルアーマンがいいサイズのイワナをバラしたようです。

どうやら魚はいるようです。ふたたび集中のスイッチが入りました。“竿抜け”している小さなポイントでウェットフライ(水面下に沈ませるタイプ)を泳がせると、ひったくるように魚影が走りました。慎重に釣り上げたのは20cmほどのイワナ。黄金色に輝く野生味あふれる魚体にうっとりし、ほっと胸を撫で下ろしました。