厳しい暑さが続いていますね。長野県南部、伊那谷の西側にそびえる中央アルプスの山並み。その懐に深く刻まれた渓谷は、まさに夏真っ盛りです! 緑豊かな森が翡翠色の流れに優しい影を落とす夏色の渓、生命感に満ち溢れています。清冽な流れから、バリエーションに富んだイワナたちが飛び出してくれました。

■夏の暑さにも負けずに山奥の渓へ

見ているだけでも涼しげな、翡翠色の神秘的な流れ

 山道をたどり向かったのは毎年夏に訪れている場所で、幾度となく大イワナに出会っています。とは言っても姿を見ただけで、一度も釣り上げていません。アプローチや流し方が悪かったり、フライを見切られたり、咥える瞬間に目が合って見破られたり……。脳裏に焼きついたイワナを思い浮かべながら毛鉤を巻いて「今日こそは!」と意気込んで歩みを進めます。

 道中のほとんどは木々に覆われた日陰です。それでも熱を帯びた空気が徐々に体力を削っていきます。いよいよ暑さに参りそうになったあたりで、水辺に降り立ちました。

 水温は13.9℃。天然のプール? 水風呂? 足を水に浸けていると、体にこもった熱が少しずつ流れに溶け出していきます。しばし、クールダウンして休憩をとってから、ロッドを継いでラインを通しました。

■好調に釣果を上げるルアーマン!  焦るフライフィッシャーの矜持

夏空の下を滔々と流れる水。先日までの雨のおかげで水勢がありました

 先に釣りを始めた同行者(ルアー)の様子を見ていると、次から次へとイワナたちが岩陰から出てきているようでした。

 一方の筆者は、水面を流すドライフライだけでなく、システムを組み替え、沈めて水面直下や深みを探ってみますが、どうにもかんばしい反応を得られません。重箱の隅をつつくような小さく、それでいて深みのある流れの巻き返しで粘り続けて、ようやく一匹を釣り上げることができました。

 上流に目をやると、同行者はすでに次のイワナをネットに入れて、嬉しそうにこちらを振り返っていました……。