大型連休が明けた信州、長野県北部では北アルプスの山並みは残雪に輝いていますが、その他の山々の雪はほとんど見当たらないようになってしまいました。山肌は新緑に輝き、ひと雨ごとに緑が濃くなっていく季節ですね。

 フライロッドを手に渓流釣りに向かったのは、長野県の白馬村と小谷村の「姫川上流漁業協同組合」が管轄するエリアです。連休中に多くの釣り人が入渓したはず。きっと渓流魚たちは神経質になっていて、シビアな釣りになるのは予想していました。はたして釣果はいかに……。

■ワンチャン狙って、スレスレ山女のプールで全集中!

川面に映る緑に季節の移ろいを感じます

 “風薫る”という言葉がしっくり来るような気持ちいい朝、まずは白馬村のとある沢に入渓しました。ここにはヤマメたちが集まっているプールがあり、そこを狙う算段です。車道脇のため入退渓は非常に楽ですので、普段から多くの釣り人に狙われている魚たちはスレていて、簡単には口を使ってくれません。

 この場所のために前夜フライを巻いてきました。フックサイズで#26前後の「グリフィスナット」です。米粒程度大きさで巻いたフライ。老眼もあって現場ではティペット(ハリス)を通すのが困難なため、あらかじめ10X(0.2号)を通しておいてあり準備万端です。

プールをそっと覗いてみると浮いているヤマメのシルエットを発見!

 さて、件のプールをそっと覗いてみると浮いているヤマメのシルエットを発見! 暗い渓に差し込んだ日差しが、流れを明るく浮かび上がらせています。5mほど下流からそっとフライを水面に落とし見守ります。といってもフライ自体は見えないので、ラインの動きと水面の様子に全集中です。数秒後、黒い魚影が急に反転しました。すかさず合わせると、水中を上流へ向かって走る鋭い躍動がライン越しに伝わってきます。釣れたのは20cm少々のヤマメですが妙に活きが良く、写真を撮ろうとしたら素早く身を翻しあっという間に流れに帰っていきました。

サイズこそ小さいですが、狙いすまして釣れただけに嬉しい一匹。2枚連射したところで逃げられてしまいました

■しつこく粘ってようやく出てきた出不精イワナ

白茶色に濁って流れる川。水量も多く流れが早いので釣りを諦めます

 一度車に戻り、しばらく姫川に沿って北上しました。過去には尺上のイワナが何度も釣れた小谷村の山中の渓を目指します。萌葱色に輝く山肌は眺めているだけで明るい気持ちになります。国道から離れて支流に沿って山のなかへ。しかし、そこには雨で加速した雪解け水が白茶色に濁って流れていました……。

夏場は暗いところが多い渓ですが、この時期はまだ明るく釣り上がりやすいです
可憐なキクザキイチゲ。河原に続く林のなかは、小さなお花畑となっていました

 次に向かったのは同じ村内ですが姫川の西側、北アルプスからの支流です。急な山肌に刻まれた山道をジグザグと降りていきます。シーズン中何度も訪れる場所なので若干飽きてはいるのですが、こちらは農業用に取水されていて水量も落ち着いており、釣り上がるには申し分のないコンディションでした。

ようやく釣れた一匹に感謝。ほっと胸を撫でおろす瞬間です

 しかしながらまったく魚信がありません。連休中に叩かれていることを意識して“竿抜け”していそうな(流しにくい、面倒臭い)ポイントも丹念に探っているのですが、フライを浮かせても沈めてもどうも反応がないのです。たまに岩陰にイワナの姿を確認できるのですが、まるで幻のようにゆらめいています。

 いつもは2〜3度思った通りにフライを流して反応がなければ次に進むのですが、試しに5度流しても反応なし。最後にもう一回。ようやく追いすがるように追ってきて半沈みのフライを咥えてくれました。20cm半ばの野生味あふれる魚体は美しく貫禄があり、しばし見とれてしまいます。

しつこいくらいに粘ると顔を出してくれるイワナたち。サイズは小さめのものばかりでした

 その後、じっくりと時間をかけて誘っていると徐々に魚たちが顔を見せてくれるようになりました。ひょっとしたら時合いだったのかもしれません。出不精なイワナたちを相手に、どうしても時間を取られてしまうので遡行スピードが落ちてしまいます。目ぼしいポイント以外はすっ飛ばして釣り上がりました。