暖かかった秋ですが、10月後半から冷え込みで紅葉の色づきも進んでいます。秋になると本州の多くの一般河川での釣りが禁漁になります。それと入れ替わるタイミングで増えているのが、河川の特定の区間に設けられた“冬季釣り場”です。

 群馬県上野村を流れる神流川は美しく澄んだ流れが特徴で、渓流釣りシーズンは多くの釣り人を魅了しています。今季も「冬季ハコスチ釣り場」の営業がスタートしました。

■上野村、神流川とハコスチ

朝イチに「冬季ハコスチ釣り場」のメインステージを見下ろす。紅葉も見頃になってきています

 神流川は利根川水系に属する一級河川で、群馬県南西端の上野村にある三国山に端を発する、全長87kmあまりの川です。民家の裏を流れるような里川の雰囲気と、深い谷間に刻まれた山岳渓流の顔を合わせもつ清流です。上流部を管轄するのは上野村漁業協同組合(漁協)。濃い魚影はもちろん、釣り人に寄り添った運営が好評で、SNS等を通じての情報発信も頻繁に行われており、人気のフィールドとなっています。

 一般渓流は禁漁となっていますが、10月〜2月の間、キャッチ&リリースの「冬季ハコスチ釣り場」として営業しています。漁協の事務所がある川の駅の裏をメインステージとして、その上流と下流、約1.5kmの間が釣り場です。

 ハコスチとは、遊漁用に水産試験場が開発したニジマス(レインボートラウト)です。野性味が強いスチールヘッド系ニジマスと、群馬県のみが保有する飼育しやすい箱島系ニジマスを交配したもの。スチールヘッド系の特徴を引き継いだ“引き”の強さと箱島系の姿形の美しさ両方を持つ魚です。群馬県が「ハコスチ」として商標登録しています。

※キャッチアンドリリースや魚の取り扱いについては、上野村漁協のウェブサイトを参照。
https://www.ueno-fc.com/winter
火曜定休となるので要注意!

■定休日明けの朝イチのチャンス! 逃した魚は大きかった……

3度目の正直でようやくキャッチできた、美しいハコスチ

 10月も残りわずかとなった日、すっきりと晴れ渡った朝の気温は3℃で少々釣りをするのが億劫になるくらいの寒さに震えます。しかし定休日の翌日ということもあってか、営業開始の1時間前には多くの釣り人が川の駅に到着して準備を始めていました。

 受付を済ませてから車で河原に降ります。どこに入るか迷っていたのですが、ちょうど川の駅の真裏あたりが空いていたのでフライを流します。水温は9.6℃。まずは流れの底に定位する大きな魚に狙いを定め、ジグニンフを沈めます。数回流すと、魚影が揺らめき反転しました。想像以上に大物です。最初こそ重いだけだったのですが、捕れると油断してほくそ笑んだ次の瞬間、激しく頭を振ったかと思うと、下流の瀬に向かって猛烈に走っていきます。対応が遅れてあえなくラインブレイク……。

 営業開始から2週間ほど経っており、魚たちはすっかりスレています。最初の一匹をバラした後は、目ぼしいアタリも得られない厳しい状態が続いていました。空いていれば場所を移動したいところですが、次から次へと釣り人が増えていき、見渡す限りでは入れそうなところがありません。

 ひとまず同じ場所で粘るしかありません。150本ほどフライを用意してきたので、ひたすら交換して試していきます。30本目くらいでしょうか、新しく結んだフライに向かってきた魚はこれまた大物です。最初こそうまくフッキングしたと思っていたのですが、大きく垂直にジャンプ。2度、3度と繰り返したところで気がつきました。スレ、背ビレにフライがかかっています……。ずいぶん長くファイトをしましたが、最終的には上流に一気に走られてフックアウトです。

 対岸のルアーマンがロッドを曲げています。かなり大物で寄せては走られてを繰り返す様子に、僕も含め周りの釣り人たちが自分のことのようにドキドキしながら見守っていました。ネットに対して魚が大きくて苦戦していましたが、どうにか無事にネットイン!

 さて、ルアーマンが掛けた魚がポイントをかき回してくれたおかげで、ニジマスたちの気持ちもリセットしたようです。その後、すこぶる反応が良くなり、僕のロッドもふたたび曲がりました。先ほどの2匹よりサイズは小さいようで少し余裕があります。それでも慎重に、丁寧にやり取りをして無事にネットに導くことができました。

 その後もフライローテーションを繰り返し、もう一匹キャッチすることができたところで、測ったかのように正午となりました。

“美ハコ”の引きは強烈です。やり取りの後は釣り人の方がぐったりしているかも……