梅雨とは名ばかりの暑い日が続いていました。山奥の渓流でも着実に季節は移ろい、ブヨたちに続いてアブも発生する時期になってきています。
毎年シーズンを通して訪れる渓へ。いつも良型が素直に飛び出してくれるのですが、今年はどうでしょう。期待に胸を弾ませながら山へと向かいました。
■ようやくベスコン! 意気揚々とお気に入りの渓へ

例年なら何度か足を運ぶ、お気に入りの渓があります。しかし、今年はなかなかコンディションが整わず、釣行がおあずけとなっていました。山上の残雪が多いこと、さらにこのところの高温続きで、まとまった雨の後は水量が増えてなかなか落ち着かず、雪代がぶり返したような状態が続いていたせいです。
このところ数日間雨も降らなかったおかげで、ようやく水勢も穏やかになってきていました。

標高1,500mほど、通い慣れた藪のなかを踏み跡を辿って入渓しました。気温は27℃ありますが、水温は11.6℃で差し込んだ足からその冷たさが心地よく染み渡ります。標高の低いところではすでに咲き終わっているタニウツギが、まだ可憐なピンクを枝に残していました。
■食い渋り! 浮かせてダメなら沈めてみたらどう?

水量や水温はちょうど良さそうなのですが、入渓してから2時間経っても一向に魚が釣れません。どうにも食い渋っているようで、瀬の肩に揺れる魚影も見えますし、たまに浮上してきてフライを咥えようとするのですが、食いが浅くてフッキングしないのです。いつもなら素直すぎるくらいに魚が飛び出す渓なのですが……。
そこで浮かせていたドライフライに見切りをつけ、ウェットフライを2本結びました。通り過ぎたばかりの下段の反転流に上からフライを落とし、水流に沿うように泳がせてみると、さっそく黒い、大きな影が岩陰からゆらりと出てきました。フライを咥えた感触で合わせましたが、うまくフッキングしませんでした……。そのままウェットフライで釣り上がると、ずいぶんと魚が出てくるようになりましたが、今ひとつ乗りが悪いです。
勢いよく流れる水に浸かりながらの遡行は、徐々に体温が奪われていきます。ときおり差し込む日の光や手を触れる岩の温もりがありがたいです。あれほど暑かったのが嘘のよう、釣れない焦りや不安のせいでしょうか。