会津駒ヶ岳は、尾瀬国立公園の北東端にそびえる日本百名山のひとつ。福島県檜枝岐村からこの山に登り、夜はランプが優しく灯る「駒の小屋」に1泊。下山後は、麓の村の観光まで存分に楽しむ、贅沢な山行を満喫してきた。

■木漏れ日の中、ミズナラやブナの巨木を仰ぎ見る

駒の小屋の隣にある駒ノ大池は、テーブルとベンチが整備され、ランチや休憩に最適

 尾瀬国立公園に含まれる会津駒ヶ岳(標高2,133m)。その登山口は奥会津の最果て、檜枝岐村にある。そこで今回は、村内の滝沢登山口から山頂を目指し、駒の小屋に泊まる計画を立てた。日帰りでも往復できる山だが、山頂部に広がる雄大な湿原をゆっくり歩こうと思ったからだ。

 会津駒ヶ岳は遠目から見るとどっしりとした優しい山容だが、登山口の階段を上がるとすぐに険しい急登がはじまる。ミズナラの多い森の中を進み、標高1,300mほどまで登るとやがて美しいブナ林が見られるようになってくる。水場があるベンチが置かれたポイントに到着し、ここで一息ついた。このあたりからオオシラビソやダケカンバが周囲に増えはじめる。ちなみに水場は休憩スペースから5分ほど下ったところにあり、かなりの急坂なので、不要な荷物はベンチに置いてから向かうのがおすすめだ。

(写真左:階段からはじまる滝沢登山口。付近の駐車場は台数が少ないため、満車時は下の駒ヶ岳登山口バス停付近の駐車場に停めて歩いてくる(写真右:登りはじめは急登が続く。ミズナラやブナの巨木が多く、木漏れ日の中を気持ちよく散策できる

 道中で印象深かったのは、森で見かける木々がどれも太く立派だったこと。以前、山のガイドから「ブナは大人が両手で抱えられるほどの太さで、大体、樹齢100年ぐらい」と聞いたことがある。この山にはそれを超えるほどの太いブナが多く、ミズナラやシラビソ、ダケカンバに至るまで、思わず「大きい!」と見入ってしまう大木ばかりだった。水場から先は斜度が緩くなり、針葉樹の森をゆっくり登り進めると、木道が現われ、湿原が広がりはじめる。視界が開け、山の先に駒の小屋が見えるようになると、「あともう少し」と足取りが軽くなる。

■会津駒ヶ岳の紅葉は、9月中旬から10月中旬が見ごろ

駒の小屋の手前にある斜面は開放的な湿原が広がり、景色に癒されながら木道を登っていく

 すぐそばに池がたたずむ駒の小屋。ここから会津駒ヶ岳の山頂までは、20分ほどの距離だ。開放的な湿原を抜けると樹林帯に入るため、草紅葉だけでなく森の紅葉も楽しめる。樹林の途中の分岐を右に進めば頂上に到着だ。

駒の小屋から会津駒ヶ岳へと向かう途中、振り返ると、堂々たる燧ヶ岳の姿が見える
草木に包まれた木道を進み、会津駒ヶ岳の山頂に到着。念願の日本百名山を踏破したうれしさをかみしめる

 山頂の道標が立っているのはシラビソやクマザサが茂った静かな樹林の中。その前で「日本百名山踏破!」の喜びの1枚を写真に収める。さらに先の中門岳を目指して木道をだどっていくと、先には雄大な湿原が広がっている。ぽつぽつと点在する池塘が、やがて大小無数に連続するようになり、遠方の山並みも眺められるようになってくる。大きな池塘のほとりに中門岳の山頂を示す道標が立つ場所に着くが、実は最高地点はその先だ。

湿原と池塘が広がる中門岳への道

 会津駒ヶ岳の紅葉は、9月中旬から10月中旬が見ごろの時期。近年は気温が高いので10月下旬まで紅葉を楽しめることもあるという。

■電気も水道もないランプと星空だけの贅沢な夜

駒の小屋の自炊室。頭上ら吊り下がるランプに加え、テーブルにも海外製のおしゃれなランプが置かれている。夕食は軽量化を意識したアルファ米、フリーズドライのカレー、豆乳スープ春雨。山で食べる温かい食事はやっぱり幸せ

 稜線の湿原散策を満喫し、駒の小屋に戻る。ここは素泊まりのみで、小屋周辺に水場もない。食料や飲料水は自分で担ぎ上げるか、小屋の売店で購入する必要がある。そうして準備した食料や飲料を取り出し、1階の自炊室で夕食を調理していると、自然とほかの宿泊客との会話が弾む。この日は宿泊客が少なく、小屋のご主人の三橋一弘さんも加わって、気がつけばお酒を片手に歓談がはじまった。山小屋は電気が通っていないため、日が暮れると三橋さんが山小屋の中のランプに灯をともしていく。自炊室はいくつものランプが輝き、「オレンジ色に照らす、この優しい光がいいね」と笑みがこぼれ、消灯近くまでこの部屋で温かい笑い声が続いた。

(写真左:気さくで話し好きな駒の小屋の主人・三橋一弘さん。「おかみさん」
と親しまれる奥さんと2人で小屋を切り盛りして、2026年で19年目を迎える。「せっかく来たなら静かな山を楽しんでいって」、「今年はキンコウカの当たり年だから、真っ赤な草紅葉が見られるよ」と、温かく迎えてくれた(写真右:寝室や自炊室など、山小屋のあちこちをランプの優しい灯りが照らし出している

 寝具は用意されており、寝室は相部屋が2室、定員は15名と、静かに過ごせる山小屋だ。トイレは別棟になっており、一度屋外に出なければいけない。しかし、周囲に明かりがないため、空気が澄んだ夜には満天の星に出会えるはずだ。街の便利さがないからこそ、ここではありのままの自然のなかで過ごすことができるのだ。

 

【今回のコースタイム】
1日目 約3時間00分 滝沢登山口 → 駒の小屋〈泊〉
2日目 約3時間35分 駒の小屋 → 会津駒ケ岳 → 中門岳 → 駒の小屋 → 滝沢登山口

 

「ふるさとチョイス」で会津駒ヶ岳の絶景を後世へ!
 会津駒ヶ岳の美しい湿原を守るため、檜枝岐村では、豪雪などの厳しい自然環境にさらされる山頂エリアの木道を、耐久性に優れ長期間の使用が期待できる「擬木(木を模した人工素材)」を導入して修繕するプロジェクトを実施している。
 これは登山者の安全と貴重な自然を次世代へ引き継ぐための大切な取り組み。現在「ふるさとチョイス」を通じて、この修繕事業の応援金を募集中だ。寄付の返礼品は、限定Tシャツやサコッシュ、村内で使える宿泊券などが選べる。返礼品とともに、山の未来を支えよう(寄付募集期間:2026年11月30日まで)。

「ふるさとチョイス」から申し込み!

写真:尾瀬檜枝岐温泉観光協会、桑野智和
協力:マムート・スポーツグループジャパン

 

●【MAP】会津駒ヶ岳

 

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