激しい雨が降ったり、盛夏のような暑さとなったり、変化の大きな6月でしたね。山奥の渓でも一気に夏めいています。今後の動向はわかりませんが、季節の移ろいや自然の機微を感じるべく信越地方の山中へフライフィッシングに出かけてきました。

■蝉の声で賑わう森、ベストコンディションの渓へ

水位も落ち着いて透明度を取り戻した流れ。瀬音が心地よく響いています

 長野、新潟県境の山中の渓は、すっかり緑が濃くなっており、今月はじめにはまだ残雪に覆われていたとは思えないほどです。エゾハルゼミが鳴く声が幾重にも重なりあって森は賑やかです。

 踏み跡と支沢を辿り、先が見えないほど繁茂した藪をかき分けながら河原に降りました。思っていた以上に良さそうなコンディションにホッとします。

 というもの、関東甲信越の梅雨入り直後に断続的に降り続いた雨と、その後6月とは思えないほどの猛暑が続いていたせいでしょうか、一度は収まっていたはずの雪代(のような濁流)が再び流れ出していたのです。支流によっては濁りがかなり強く、しばらく釣りにならないような状況でした。そんな釣り人の心配をよそに、穏やかに流れる水は澄んでおり瀬音が心地よいリズムを奏でています。

 入渓時の水温も10.5℃と申し分ありません。流れに沿うように咲くタニウツギのピンクが緑に染まる景色に彩りを添えています。

 小型のカワゲラ、トビケラたちがちらほらと飛び交っています。例年この時期にはカワゲラの一種の「カワゲラ」が大量に羽化していて目立つのですが、川岸の草むらを覗いても姿を見かけません。いまだ斜面の陰にこびりつくようある残雪に過ぎた冬の雪の多さを思い出し、少し季節の進行が遅いのかもとひとりごちました。

■素直すぎるイワナたち! 良型が気前よく水面を割る

太さもある良型が次々と飛び出してきます

 さて、入渓した河原の前のポイントこそ反応を得られませんでしたが、そのすぐ上流からさっそく魚が飛び出しました。落ち込みが連続する渓相は変化に富み、ポイントの宝庫です。ドライフライを漂わせると、そのほぼ全ての場所から魚たちが気前よく飛び出してきてくれました。20cm後半の野趣溢れるイワナたちは太く立派な体躯で、疑う素ぶりもなくフライに食いついてきます。

食欲旺盛なタイミングだったのでしょう。とにかくいっぱい入っていました

 釣れない理由は気になりますが、よく釣れる条件も知っておくべきです。ストマックポンプを入れてみました。水を飲ませただけで溢れるように、出るわ出るわ……。一回の吸引だけで、シャーレに収まりきらないほどまだ消化されていない虫たちが出てきました。水生昆虫の幼虫が主ですが、それらの成虫や甲虫などの陸生昆虫も混ざっていて、イワナの悪食具合がよくわかります。

 季節外れの雪代のせいできっとお腹空いていたのでしょう。要はタイミングこそが好釣果への近道なのを再確認しました。