■どうしても諦められなくて、準備万端でリベンジ釣行!
前回の釣行から2週間経っていました。水中に魚たちが揺らめき捕食を繰り返す光景をどうしても忘れられず、ふたたび鮎沢川を目指して自宅を出発したのでした。
もう少し近い場所にも冬季釣り場はあり、そこはそこで気に入って何度も足を運んでいるのですが、釣りの趣は川が違えば似て非なるものです。泳ぐニジマスたちの見た目も反応も違います。こだわりと言えば聞こえがいいですが、この執着こそが釣りに行く原動力になっています。
正午前に到着、足早に前回と同じプールへと向かいました。正午前に到着。気温は12℃、水温は9.3℃で前日の雨の影響か、やや濁りの残る流れですが、水位はすでに落ち着いています。さっそく青白い魚影が揺らめいているのを発見しました。目を凝らしていると徐々に見える魚の数が増えていきます。実はニジマスの追加放流があったようで期待していたのですが、なぜか魚たちの顔ぶれは前回と変わらないような印象です。
すでにフライフィッシャーが3人、ドライフライや沈めてルースニングで釣りをしています。しばらく観察してみましたが、放流されてから連日多くの釣り人が訪れているせいでしょう。すでにスレスレのようでした。
ときおりライズはありますが、魚たちの選球眼は確かなもの。的確にフライを避けて捕食行動を繰り返しています。
場所が空いたので、僕もロッドを振ってみました。このために用意してきた、21番のフックに小さめに巻いたユスリカを模したフライを結びました。ライズしているなかでも小さめ、40cmほどの魚に狙いを定めます(大きい魚は掛けても取れる自信がない)。
すると、ひと流し目でいきなり疑うこともなくゆっくりとフライを咥えるではありませんか!
下流にじわじわと逃げようとするのを制止、じわじわと寄せつつも、来た甲斐があったとついほくそ笑んでしまいます。一瞬の油断がよくなかった。上流に猛烈な勢いで走る魚への対応が遅れてロッドが寝た瞬間、ティペットがぷつりと切れてしまいました。
1時間に1匹程度はフライに興味を示してくれるのですが、口を開くことはありませんでした……。夕方、様子を見に来ていた近所の釣り人によると、80cmオーバーもいるらしいです。たしかに60〜70cmのニジマスも何匹か見かけたので、大物を釣るチャンスもありそうです。しかし、筆者にとってはサイズではなく、まずは一匹釣り上げて魚の顔を拝みたいと切に願うのみです。
■さらに延長戦! 念願の一本
このままでは悔しくて帰れません。1泊して翌日、延長戦に挑みました。今回購入したのは日釣り券なのですが、日釣りとうたいながらも翌日も釣りができるという、一風変わった特典付きなのです。ありがたく使わせていただくことにしました。
上流部へいけばきっとスレていないだろうと高を括り、右岸沿いの遊歩道を歩いていきます。朝8時、気温は4℃で水温は7.1℃。途中に休憩がてら足を止めて流れを見下ろすと、瀬のなかにもゆらめく魚影が見えますが、ぐっと堪えて上流へ。
すると一つのプールのなかに数匹溜まっているのが見えました。この川沿いの道は散歩をしている人が多いのですが、川から一段高いので魚を見つけるのに非常に便利です。頻繁にライズを繰り返している一匹に狙いを定めました。静かに河原に降りて、羽化したてのユスリカをイメージしたフライを斜め上流から、ダウンクロスでフライを先行させて流します。
警戒されないように姿勢を低く河原のアシに身を潜めているので、もう魚の姿は見えません。しかしフライに興味をもっているようです(浅く流れの穏やかなプールですので、魚の動きに合わせて水面が揺らめきます)。
徐々にラインを伸ばして3投目、ついにそのときはやってきました! 大口を開けたニジマスが水中から顔を出したかと思うと、意外なほどにゆっくりとフライを咥えました。合わせ切れしないように、それでもしっかりとフッキングするように合わせると、すぐに下流へ走っていくのを制します。今度は一気に上流へと向かって泳いでいきますが、2度の失敗で織り込み済み、魚に合わせて一緒に上流へと付いていきます。
こうなると我慢比べ。ときおり岸際のアシの茂みに鼻先を突っ込みながら流れを遡っていくニジマスに引っ張られるように、ロッドを掲げながら移動していきました。
流れのど真ん中ですが、腰上の深さのなか、ようやく観念した様子のニジマスをネットに招き入れました。黒点が極端に少ない魚体が特徴的で、サイズこそ45cm程度でしたが体高があって風格のある魚です。透明感があるヒレと相まって、まるでブリのようなパツパツのプロポーションにすっかり見とれてしましました。
派手に流れのなかを移動したので、上半身はすっかりびしょ濡れです。ふたたびライズが始まっていました。大休憩をした後、この勢いでもう一本! そう思ったのですが、どうも魚たちは疑り深くなっているようで、フライは完全に無視されており、ただただ時間が過ぎていきました……。
鮎沢川漁協の日釣り券は、実は温泉(3か所あります)の入浴券として使用できるという、ありがたい特典も付いています。露天風呂に浸かり、すっかり暗くなった空に浮かぶ富士山のシルエットを眺めつつ、冷えた身体を温めます。たった一匹しか釣れなかったのですが、それでも満ち足りた気持ちで帰路に就きました。