大菩薩嶺(だいぼさつれい)の東斜面から流れ出した小菅(こすげ)川は、小菅村を横断するようにして奥多摩湖に流入する。管轄するのは小菅村漁協。冬季管理釣り場やキャッチ&リリース区間を設けたりと精力的に釣り場を作っている。渓谷美も素晴らしく釣りをしていても気持ちがいい。足繁く通うファンの多い川だ。
僕自身、かつては年券を購入していたこともあるほど通ったエリアで、昨年のシーズン最終日もここだった(釣果はイマイチだった)。果たして今回は良型の渓流魚に出会うことができるだろうか……。
■不意打ち! いきなり大物がかかる
期待と不安にワクワクしながら最下流部、キャッチ&リリース区間最下流部の「金風呂」バス停下から釣りを始めた。
広い駐車スペースと平坦な流れ。適度な距離感で石を配置して区切られているような雰囲気は、まるで管理釣り場のようだ。いささか趣に欠けるが、魚影は濃い。とりあえず魚の顔が見たいと思っていた。湖から遡上する(天然の)大物にもひょっとしたら出会えるかもしれない。
フライを流すと2度3度とアタリがあった後、元気なニジマスが出迎えてくれた。平均して25cm程度の魚たちが、飽きない程度に釣れてくれる。程よいニジマスのファイトにすっかり油断していた。
対岸寄りの“かけ上がり”部分、沈み石が流れのアクセントになっている箇所にフライを通してみた。“アタル”と同時に予想外の重みでロッドが激しく曲がっている。大物だ! 堪らずリールファイトに切り替え、じわじわ長期戦に持ち込む。下流に走られたらどうしようかと思い、プレッシャーを与え続けてどうにか手元に寄せてきた。(渓流用サイズだったので)うまくネットインできるか不安だったが、案外すんなり収まってくれた。体長45cmほどの恰幅のいいニジマス。魚も僕も息を荒くしていた。
■期待大! 大物の気配漂うポイントで
車で上流へ移動した。橋のたもとから岸沿いに下ると、岩壁に挟まれて流れが集束している場所がある。昼なお暗い、いかにも大物が潜んでいそうな雰囲気だ。
そっと上から覗いてみると、中層にはせわしなく行ったり来たりしていている20〜30cmくらいのニジマスたち。目を凝らしてよく見ると、ボトム(底)にへばりつくようにたゆかう、大きな魚影を見つけた。底に向かう流れにラインを添わせてフライを根掛かりしそうなくらい沈める。ラインが止まった! 身をよじった魚影が銀色に煌めいた。今度は想定していたので落ち着いてはいたが、僕は湿ってフリクションの悪い岩肌に立っている。こんなところで足を滑らせることはできないので、ラインのテンションを保ちながら、じわじわと下流の開きまで移動した。浅瀬に寄せればこちらのものだ。
先ほどのニジマスとサイズは同じくらいだが、流れの強いポイントにいただけあって、流線形でカッコいい魚体。発達したヒレも赤く染まっていて美しい! 今日はどうしたんだろう? もう帰ってもいいかな。