10月に入って本州の多くの河川での釣りが禁漁となってしまった。けれど、一年中釣りができる! しかもダイナミックな景色の中、本流のビックトラウトが相手! トラウトフリークにとって、まるで夢のような川がある。長野県北部を流れる犀川(犀川殖産エリア)だ。

 年間を通じて人気のエリアだが、この時期、より一層“熱い”釣り人たちが押し寄せる。谷間の樹々も色づき始め、“セカンドシーズン”を迎えた犀川本流でフライを流してみた。

■通年釣り可能! 犀川(殖産エリア)本流の魅力

放流ポイントの「さざなみ」の下流の流れ

 梓川や高瀬川など、北アルプスの山々から流れ来る水を集めた犀川は、国道19号線に沿って山間部を抜け長野市街地へと流れる。市内で千曲川と合流した後、新潟県に入ると信濃川と名前を変えて日本海へと注ぐ。

 このうち、「平ダム」から長野市郊外の千曲川合流点の少し上流までが、犀川殖産漁協が管轄するエリアだ。本流は通年、つまり一年中釣りをすることができる(長野市大岡大八橋〜信州新町更級橋は、キャッチ&リリース区間となっている)。

 漁協によるニジマスの放流も定期的に行われているが、それ以外にもトラウトたちが多く生息している。犀川の特徴でもある、“押し”の強い流れに揉まれた大型魚たちは、太公望たちを魅了してやまない。

 ダイナミックな景観と荒々しい瀬、緩やかに蛇行する流れ……。四季の彩りをつぶさに映す水面、のびのびと竿を振る悦びに溢れる川だ。

■平ダム解放中! 最上流部に新たなランの誕生!?

下流から「平ダム」を望む。いい流れが続いている

 この夏の犀川は災害級の大増水こそなかったものの、雨が続いて増水、濁りの引かない状況が続き、釣りが成立しないコンディションが多かった印象だ。僕自身、近くに住んでいながら、なかなか足を運ぶことがなかった。

 秋前に久しぶりに川見をして驚いたのは、最上流部にある平ダムがオープン(全開放)していること。今までも部分開放していることはあったが、これほど継続して全開となっていることは珍しい。

 この影響で大八橋上流の放水口まで途切れることなく滔々と水が流れており、最上流部の流れが大きく変わった。今までこの区間で竿を出すことはなかったが、距離にして1.5km以上、新たなラン・ポイントができたのではないだろうか。ダムが完全に開いているので、上流のトラウトたちもダメージなく降ってくることも考えられる。

■満足できる一本を求める釣り

成熟したニジマスの精悍な面持ちに見惚れる

 10月上旬にニジマスの放流も行われた。SNSなどの投稿を見ていると、このところ水量も安定して釣果は良好のようだ。ただ、人気激戦区の本流釣り、決して簡単に釣れる訳ではない。本流釣りを楽しむ人ならお分かりだろうが、1日中“投げて・流して”を繰り返しても掛かるのは数本だろう。もちろん、タイミングやコンディションによっては、アタリすらなく(感じられない)終わる日もある。

 取材日も夕方近くになって、満足できる一本をようやく釣り上げることができた。スイングさせたフライをリトリーブした瞬間に果敢に食いついたニジマス。そのまま流心に入られたため、余計に強烈な引きとなり、60クラス以上を掛けたかと錯覚させられた。(足元が悪く移動が困難な立ち位置だったため)何度も寄せては走られを繰り返しつつ、どうにか緩流帯に誘導してキャッチできた。精悍な面持ち、野生味溢れる魚体、この日の釣りが報われた気がした。