清らかな流れと渓谷美、そして渓流魚の美しさに定評のある群馬県の神流川。神流川は、利根川水系に属する一級河川で、群馬県の南西端の上野村にある三国山の北麓に源流を発する。多野山地の谷間を流れ下って、高崎市新町付近で烏川と合流し、利根川に流れ込む。全長87kmあまりの川だ。民家の裏を流れるような里川の雰囲気と、深い谷間の山岳渓流の顔を合わせもち、早瀬と淵が連続しており好ポイントが多い。

■清流・神流川!  精力的な上野村漁協の取り組みに期待

「川の駅 上野村」のすぐ上流、楢原橋から見た黒川合流点

 関東随一の清流を謳う神流川。その上流部を管轄するのが上野村漁協(漁業協同組合)だ。ただ魚を放流するだけでなく、釣り場環境に関して積極的な取り組みを行なっている。

 管轄するエリアを細かく区切って、予約制で1日の入場数を制限した「毛ばり釣り専用区(フライ・テンカラ)」を設けたり、キャッチ&リリースの区間(エサ釣り禁止)も予約制(6月からは一般)と一般(予約不要)の2種類がある。もちろん、それ以外のエリアでは一般的なレギュレーションだ。

 精力的な活動の結果、シーズンを通して魚影が濃く、多くの渓流釣りファンを集めている。

 その分、レギュレーションが細かく複雑だが、HPやSNS等でも頻繁に情報を公開してくれているのでありがたい。

上野村漁業協同組合:https://www.ueno-fc.com

■キャッチ&リリース区間で腕試し!

桜のピンクに覆われた「ヴィラせせらぎ」。本流のキャッチ&リリース区間の一つとなっている

 晴天の予報に反して朝から霧雨が谷間を湿らせていた。肌寒い空気に魚の反応が気になる。各ポイントを見て回った後、キャッチ&リリース区間の「ヴィラせせらぎ」裏の河原へ。

 近寄ってみるとライズ(水面付近での捕食行動)が断続的に起こっている。さらに近寄ってそっと覗いてみると、うわずっている魚だけでかなりの数……。しかも、大型のヤマメも混ざっている。これは(釣りを)やるしかない。

入れ食いとはいかないが、尺クラスのヤマメがポツポツ釣れてくれる

 いざ釣りを始めると、決して簡単ではないが、それでも飽きない程度に釣れてくれる。釣れるのは比較的大きなヤマメが多く、尺(約30cm)を超えるサイズになると、顔つきも厳つくて手元で恨めしげに睨む表情に見惚れてしまう。

 水面ギリギリでフライを見切ってUターンしていく魚に一喜一憂するのも含め、あまりにも楽しいので、予定よりずいぶんと長く粘ってしまった……。

■しっとりとした春の渓…… 流れに潜むつぶらなヤマメたち

 続いて、中ノ沢(毛ばり釣り専用区間より下流部)と塩之沢の一部を探ってみた。

中ノ沢の下流部。雰囲気もよく、遡行しやすかった

 霧雨に濡れそぼる支流のしっとりとした雰囲気が素晴らしい。シダレ桜やヤマザクラ、ツツジが、まだ色彩の乏しい春の渓谷に鮮やかな彩りを添えている。流れは全体的に浅めで、水の流れの美しさが際立っている。狭い谷間でも、この季節はまだ枝葉が生い茂っていないので、気持ちよく川面にフライラインを伸ばしていくことができる。

雨のなか、アントパラシュート(ドライフライ)#19に果敢に喰らいついてきた

 どれくらい魚が入っているのか不安で、丁寧に探りながらフライを流す。お約束通りのポイントから小気味よくヤマメたちが飛び出してくれた。イワナが好みそうなポイントを執拗に狙ったが、今回釣り歩いた箇所では出てくるのはヤマメのみだった。

 今回は入れなかったが、本谷と中ノ沢、2つある「毛ばり釣り専用区」や、「川の駅特設釣り場」(こちらは6月から予約不要に)も魅力的だ。人気で予約が殺到しているようだが、今度はそちらも釣ってみたい。