9月30日。ついにこの日が来てしまいました。長野県北部、「高水漁業協同組合」管内の渓流釣りの最終日です。愛好者にとって特別な日、今シーズンのフィナーレを飾るべく、幾度となく足を運んでいる思い入れのある渓で“釣り納め”をしました。

■北信濃の渓! そろそろ恋の季節? のイワナたち

部分的に紅葉が始まっています。山肌を吹き抜ける風はすっかり秋めいていました

 長野県内を北へ流れる千曲川(信濃川)水系。新潟県境にほど近い栄村の山奥には、放流に頼らずとも自然繁殖で息づく野生のイワナたちがいます。アプローチは遠いですが、その分ほとんど釣り人が入らないような場所(人間の足跡を見たことがない)なので、魚は純朴そのものです。数やサイズを狙うというより、釣りをしながらもゆっくりと思索の時を過ごせる、そんな場所です。

 曲がりくねった林道を車で進み、あとは踏み跡のような道を、藪をかき分けながら歩いていきます。幾度も通った今でこそスムーズに先に進めますが、通い出した頃は試行錯誤して何度も行ったり来たりを繰り返して、今よりずっと時間がかかっていました。

 ときおり、藪の隙間から流れを観察していると、浅瀬に魚影がゆらめいているのを見つけることができます。すでにスポーニング(散乱行動の一環)を意識し出しているのでしょうか。

■秋の装いに揺らぐ釣り人の心

緑は色褪せ、黄色みを帯びた秋の森。流れにはいち早く紅葉した葉も漂っていました

 一帯では雨が3日間断続的に降っていたのですが、源流の水量はまったく増えた気配がありません。気温は20℃、水温は12.1℃でようやく秋の涼しさを感じるようになりました。流れを包み込む深い森は、紅葉が徐々に始まっています。

 前回訪れたのは梅雨明けの頃でしたが、あれほど緑に輝いていた景色はウォームトーンの落ち着いた雰囲気になっています。それでも陽が差し込むと明るく華やぎ、最終日のもの悲しさを癒してくれるようです。そう、どうしてもセンチメンタルな気持ちになってしまうのは仕方ありませんね……。今シーズンの釣りをいろいろと思い返しながら、普段よりもゆっくりと釣り上がりました。