日本は四方を海に囲まれた島国なのは言うまでもありませんが、筆者の住む長野県は、海がありません。いわゆる“海なし県”です。その代わり渓流には恵まれているのですが、すぐ隣には海と渓流の両方を合わせ持つ羨ましい県、新潟県があります。
そこで、海釣りや海水浴でいつも長野県民がお世話になってるのが、上越・糸魚川エリアです。日本海にほど近い場所で渓流釣り! なんだか不思議な感覚ですが、海釣りをしていてアメマスやサクラマスが釣れることはあります。それならば、「海そばの渓流で、ヤマメやイワナが釣れるはず!」。フライフィッシングで試してきました。
■山迫る海岸線! 水生昆虫の息づく渓流が海まで続く
新潟県の中でも県西部の富山県境にかけては、急峻な山地が海岸線まで迫っているところが多くあります。
今回いくつかの川を巡りましたが、海なのか川なのかわからないくらいの場所なのに、淡水域に生息する水生昆虫たちが豊富でした。シーズン早期には、雪国の清冽な雪解け水が海まで一気に流れ落ちます。一般的な(中)下流のイメージ(緩やかにたゆたう大きな流れ)が、すっかり覆されてしまいました。このエリアに限らず、国内にはそんな海抜0mにほど近い渓流が、まだまだ存在するのでしょう。
「これなら、きっと簡単に魚が釣れる!」奥には海が見えます。少年時代は海のそばで育った筆者にとって、潮の香りと共に郷愁を誘う景色です。「ひょっとしたら、シーバス(スズキ)がかかるかも!」なんて思っていたのですが、現実は甘くありませんでした。
■下流? で釣れたまさかのイワナ
川から川へと海岸線を転々と移動しながら竿を出し、ようやくアタリがあったのは本当に小さな渓流でした。中流や下流の雰囲気ではなく、上流域の流れがそのまま海に流れ込んでいるようです。
巻き返しでウェットフライを泳がせていると、岩の間から浮上してきた魚影がパクリとフライを咥えました! なんとイワナです。元は放流された魚なのか、さほど長くない川のどこかに自然繁殖できる環境が整っているのか……。それは定かではありませんが、山奥に住むイワナのイメージがすっかり覆されました。
似たような環境で釣りをしている人にとっては“当たり前”のことかもしれませんが、山国に住む筆者にとっては驚きでした。初日はここで終了。
※イワナやヤマメなどの渓流に住むトラウトたちは、降海することで大きくなって川に帰ってきます。ただし、新潟県内の河川では、(許可された採捕以外)海から川に戻ってきたヤマメ・サクラマスを釣ることは禁止されています。