長野・新潟の県境、奥信濃は新緑眩しい季節を迎えています。一帯の河川は、深く浸食された険しい谷が多く、その渓谷美は圧巻です。そのため、入退渓も一筋縄でいかない場所も多いのが特徴ですが、大物の渓流魚が潜んでいる期待も高いです。
この季節、カゲロウなどの水生昆虫の活動も盛んになります。神秘的な羽化のシーンやライズ(水面付近での渓流魚の捕食シーン)を見逃したくない! 雨後、支流の水が落ち着く頃合いを見計らい、丹念に巻いたフライを懐に忍ばせて川へと向かいました。
■長野・新潟県境の渓谷美
GW連休の最後に降ったまとまった雨で、本流(千曲川・信濃川)は濁流と化しました。しかし、そこに流れ込む支流の多くはすでに落ち着き、澄んだ流れに戻っていました。萌黄色に霞む山肌に藤の花がアクセントを加える北信濃の初夏、ロッドを携えてポイントを探しているだけでもウキウキします。
ちょうど一帯は、「苗場山麓ジオパーク」になっています。懸崖が作り出すダイナミックな渓谷美に圧倒されそうです。次から次へと気になるポイントが目白押しで、どこでフライを流すか悩まされてしまいます。
この辺りは前述した通り県境です。ポイントを探しながら行ったり来たりしていると、管轄する漁業協同組合(漁協)も変わります。筆者は足繁く通うエリアなので、両方の遊漁券(年券)を購入してあり、思う存分に行き来することができます。
※長野県側:高水漁業協同組合、新潟県側:中魚沼漁業協同組合
■胸踊る! カゲロウたちの饗宴
しかし、渓相と釣果はまた別の話のようで、期待とは裏腹にアタリすら得られない時間が過ぎていきました。
昼寝タイムを挟んだ午後遅く、遠目に見てもわかるくらいカゲロウが飛び交っている場所を発見しました。エルモンヒラタカゲロウたちです。体長1cmほどのカゲロウで、雄雌で色が違います。いずれにしても透けるような透明感があり、まるでガラス細工のように繊細。風に揺られながらも懸命に舞う姿にすっかり見惚れてしまいました。
しばらく観察していましたが、水面にライズは起きません。その場を後にして河原を進み、瀬の弛みにフライをゆっくりと漂わせると追ってくる黒い影! 残念ながらフッキングしませんでしたが、もうひと流しすると今度は鈍いアタリと共にフライを咥えてくれました。根掛かりかと思うほどの重さにラインの動きが止まります。「大きい!」と思った瞬間にテンションが抜けてしまいました……。