日本には固有種、外来種ともに何種類かトラウトがいるが、その中でもブルックトラウトは生息地がかなり限られる。ましてや自然繁殖した天然のブルックトラウトを本州の河川で釣るには、奥日光しかないだろう。

 ちょうど近くに行く仕事があったので、このチャンスを逃すまい。かねてより憧れていたフライフィッシングの聖地・湯川へ、期待に胸を膨らませ向かった。果たしてブルックトラウトは釣れるのか?

■フライフィッシングの聖地! 日光湯川

金精峠から望む男体山と湯ノ湖。画面右側の湿原が戦場ヶ原だ

 日光国立公園、男体山の裾野に位置する「戦場ヶ原」の湿原と原生林を緩やかに流れる湯川。湯ノ湖と中禅寺湖の間をつなぐ全長11kmほどの短い流れだ。

 湯ノ湖、中禅寺湖と共に釣り場として有名なエリアだが、かつては奥日光には魚がいなかったという。長崎のグラバー邸で有名なトーマス・グラバーが、イギリス領事館員だったハロルド・パーレットと共に、1902(明治35)年にブルックトラウトの卵を取り寄せて孵化・放流をしたのが始まりだ。日本におけるフライフィッシングの聖地とも言われている。

 湯ノ湖と湯川は、冷水域における魚類資源と釣りの調査水域にあたり、「全国内水面漁業協同組合連合会」が管轄する。それゆえ体制も整っており、キャッチアンドリリースを始め、調査票の記入など細かいルールやマナーもしっかりと確立されている。

全国内水面漁業協同組合連合会日光支所
URL:http://www.naisuimen.or.jp/nikko/

■自然河川で釣れるのは湯川だけ! ブルックトラウトとは

湯川に生息するブルックトラウト

 北米原産のトラウトで、日本名はカワマス。れっきとした外来種だ。奥日光では前述のパーレット氏に親しみを込めて“パーレット”鱒とも呼ばれ、道東と本州では他に長野県・上高地(禁漁)でも自然繁殖している。また遊漁目的の養殖も盛んで、管理釣り場でも釣ることはできる。

 一見するとイワナに似ているが、まず目につくのは体側の黄色い斑と赤点、さらに背中の淡緑色の唐草模様だ。下部のヒレは赤みを帯び、イワナ同様白い縁取りがされている。