「明日、どこか釣りに行きますか?」そう連絡が来たのは、山奥での釣りを終えた帰路、馴染みの定食屋さんで遅めの晩御飯を食べている時でした。
相手は長らく仕事をいただいている会社の管理職、小林さん(仮)です。そう言えば、「金曜日に休み取れそうだから、ぜひ連れて行ってください」。そう言われていたのを思い出しました。最近フィッシングバム化している僕と違い、忙しい小林さんのこと。あまりあてにしていなかったのですが……。
連日、釣り歩いていたので正直疲れていたのですが、「いい場所連れて行きますよ」とメールに返信して、家にも帰らずに再び川へ向かったのでした。
■“接待ゴルフ”ならぬ接待フィッシング!
昭和から平成にかけて、“接待ゴルフ”というワードをよく耳にしました。令和の接待ゴルフは、どうなっているのでしょうか。接待に限らず、スポーツや趣味を一緒に楽しむことは親睦を深め、“繋がり”が強くなりますよね。
アウトドアのアクティビティにもそういった面が大いにあります。もちろん釣り、渓流釣り然りです。
自然相手に一人静かに対峙するひとときも大事にしたいですが、同じ価値観で釣行を共にし、喜びを分かち合うことは、安全面以外でも大きなメリットがあると思います。そのうち、他の釣り人とも快くフィールドを共有できる、そんなムードが広がれば素晴らしいですよね。それこそが、日本の限られた釣り環境を楽しむ術だと言うのは、少し風呂敷を広げすぎでしょうか。
誰かを釣り場に案内する時、僕自身が気をつけていることを書いていきたいと思います。
■相手の好みを把握するのが第一歩!
まず、数を釣りたいのか、大物を狙いたいのか、イワナがいいのか、ヤマメなのか、はたまたアマゴ? 渓流がいいのか、本流で釣りたいのかなどなど、相手の好みをなるべく詳細に聞き出しておくのが第一歩かと思います。きっと取引相手を接待する場合と一緒ですね。
今回の小林さんは、ルアーでの海釣りにどっぷりとハマり、最近は渓流へも足繁く通っています。昨年の夏も一度、僕の案内で渓流釣りをしました。どうやら、最近僕が良型を釣っている川が気になっているようです。そこは深い河岸段丘で入退渓のルートが限られ、さらに長い流程のどこにいい魚が多く入っているのかが非常にわかりにくいところです。僕自身ずいぶんと通ってようやく把握できてきました。
いずれにせよ、魚影くらいは見せてあげないと顔が立ちません。わずかな期間でも空けると状況が一変してしまうことは、渓流釣りではよくあります。数日、夏のような暑さが続いていたうえ、川はすっかり渇水しています。それでも、近々のコンディションを熟知している川へと案内しました。