北海道・千歳川のサケの遡上がピークを迎え、今年は過去最高に迫る勢いだという。秋が深まるにつれ、本州の各地でも海から帰ってくる魚たちが徐々に増えてくる。

 いよいよ釣りシーズンの到来だが、サケは大切な水産資源だ。特に河川(内水面)においては法律で釣ることが禁止されている。ただし、特定の漁協が設けている“釣獲調査”や“有効利用調査”に事前に申し込みすることで、調査員として釣りをすることができる(当然、釣果等についての報告義務もある)。

 この秋から一般向けに“増殖調査”が始まった『庄川沿岸漁業協同組合連合会(以下、庄川漁連)』。富山湾に注ぐ庄川での2日間の調査の模様をお伝えしたい。

■第1回! 庄川サケ増殖調査

世界遺産「合掌造り集落・白川郷」を流れる庄川

 舞台となる庄川は、岐阜県高山市荘川町を源流とし、富山県に入ると五箇山、庄川峡を抜け利賀川と合流、庄川扇状地の東端、高岡市と砺波市の東側、射水市を北流し日本海へと注ぐ清流。アユやサクラマス釣りの川としても知られている。

 大前提として「庄川サケ増殖調査」は、庄川漁連が、ふ化放流事業(増殖)のために行う捕獲、調査だ。漁協の組合員以外の一般の釣り人が参加できるようになったのは、今年が初年度となる。

エリアと通し番号入り。「調査中」の腕章を付けての釣り。責任を感じる

 8月10日に申し込みが開始され、釣獲調査は10月27日に始まって12月5日までとなっている。今回筆者は、11月7日と8日に2日連続の日程で申し込みをしていた。1日当たりの人数制限も厳重になされている。“親サケを釣り上げる責任重大な使命”を無事に果たすことができるだろうか。

庄川漁連・サケ増殖調査:https://www.shougawa-salmon.com

■魚影薄いながらも釣る人は釣る!

 調査場所は河口約5kmから9kmの定めた区域となっており、上流側と下流側で2つのエリア(予約時に申請)に分かれている。

 初日。受付を済ませた後、申し込んでいた下流のエリアへ。時期的に遡上のピークにはまだ早いうえに水量もかなり少なく、ひと目見て厳しい状況なのは分かった。魚影も確認できない。そんな状況なので、慌てることはないとのんびりとフライロッドにラインを通した。

 しかし開始から5分ほど経った頃、すぐ上流にいたルアーマンの先でバシャバシャと水飛沫が上がっていた。サイズこそ大きくないものの、精悍なオスを見事に釣り上げていた。

ルアーに食いついたサケとファイト中の釣り人。落ち着いたやり取りが見事だった

 俄然やる気になって、この日のために巻いたフライを流す。アタリかと思うと水底の流下物がハリに掛かっているだけ。ボトムぎりぎりを攻めるのがセオリーなので、根掛かりするかしないか、常にヒヤヒヤだ。今度は明確なアタリ! 掛かったと思ったらすぐにフックアウト。フライを手元に寄せて見ると、ハリ先にはウロコが付いていた。スレ(※1)で掛かったようだ……。相手はサケか、スズキか、それとも……。

待望のメスのシロザケ。こうして見ると、あらためてその大きさがわかる

 ふと上流に目をやると、再び件のルアーマンのロッドが曲がり、ラインが煌めきながら脈打っている。手強そうだ。今度はメスの77cm! これまた美しい。ブナ(※2)は入り出しているが、シーライス(※3)付きだ。この激シブの中で2本も釣り上げるとは素晴らしい! 羨ましい!

貴重な親サケ。特に卵を抱いたメスは増殖事業の要だ

 釣れた場合、管理棟へ電話をかけてサケを引き取りに来てもらう。「ありがとうございました」という言葉と共に、採卵のために連れて行かれるサケを見送る。(自分が釣った訳でもないのに)なぜか切ない気持ちになった。ちなみにこの日は上流エリアでの釣果はなく、終了直前に下流エリアの上部で粘っていた餌釣り師がオスを1本上げて、全体で計3本という結果だった。

※1 ハリが魚の口以外の場所に引っ掛かってしまうこと。

※2 産卵のために川に入り成熟し出すと体に表れる斑模様。成熟具合により増えていく。

※3 寄生虫の一種。川に入ると落ちていくので、付着してると遡上して時間が経っていない証。