GW、長野県北部の千曲川河川敷では、菜の花が黄色い絨毯のように広がっています。この冬は雪が少なかったため、川に流入する雪代(ゆきしろ)もすでに落ち着いてきました。本流で越冬し、春の訪れと共に各支流に遡上する大物を狙うには、雪代の前後の時期が適しています。豪雪地帯では残雪の量が多く、早い時期だと足場が危ういので、川岸の雪が消えた後半の方が釣りには快適です。
標高わずか300mに満たない地域にも関わらず、斜面の陰にはまだ残雪がこびりつくように残っています。山の斜面には山桜、河原にはカタクリやキクザキイチゲもまだ花を残しています。オキナグサが重たそうに開きかかった頭(こうべ)を垂れていました。果たして、素晴らしい渓流魚と出会えるのでしょうか。この日のために巻いたフライ(毛鉤)とロッドを手に河原に降り立ちました。
■ラストチャンス? 遡上するヤマメ・雪代イワナを狙って
長野・新潟の県境で千曲川は名前を変え、日本一長い信濃川となります。豪雪地でもあるのですが、支流の雪解け水も落ち着いてきました。雪代が滔々と流れる季節もいよいよ終わり、渓流釣りの本格シーズンです。藤や桐の花が咲けば山里にも初夏の香りが漂いますね。
この季節、狙いは雪代に乗じて渓流に遡る「戻りヤマメ」や、「雪代イワナ」です。ヤマメはスモルト化(銀化)して体高があります。イワナは色白で太く、アメマスのような大きな白点。どちらも大きく、ヒレの張った健康的で立派な、美しい魚体が魅力です。
渓はすでに春から初夏へ移ろうとしています。遡上魚を(効率よく)狙うのは、今回がラストチャンスかもしれません。水が多いと釣りにならないので、雪代が落ち着くタイミングを狙っていました。遡行や渡渉が困難な程度には増水していますが、流れはすっかり軽くなっていました。
■やはりいた! 銀ピカ! 戻りヤマメを確認
見惚れてしまうほどの立派な遡上魚。その顔を見たくて、毎年春先から足繁く通うエリアです。今シーズンもこれで4回目ですが、まだ一本も釣れていません(通常の居着きイワナは釣れています)。それでも、訪れるたびに何かしらの反応があったり、針掛かりが浅くて一瞬でバレてしまったり…… なかなか気をもたせてくれる、楽しい釣りをさせてもらっています。
合流点からほど近い、一番の有望ポイントへ。カゲロウたちに加えて、小型のトビケラやカワゲラも盛んに活動しています。期待にワクワクしながら、フライを流すラインや深さを変えながら、丁寧に探っていきます。何度目でしょうか、流れの束の中から銀色に輝く魚体が浮上してきました。
反転したので、一瞬フライを咥えたのかと思いましたが、残念ながら見切られてしまったようです。銀光りした見事なヤマメでした。ポイントから離れ、時間を置いてからもうひと流し。けれど、もう出てきてはくれませんでした。確かに顔(魚体)を見ることはできたのですが、「顔が見たいって、そういうことじゃないんです……」。