全国の漁協・河川の解禁ラッシュも一段落、渓流釣りシーズンも徐々に本格化しつつありますね。

 筆者の住む長野県北部は、この時期はまだ水温も低く、雪代(雪解け水)が流れ込む季節です。今年は積雪も少なかったうえに春先の高温で一気に雪は減っていますが、まだ魚たちの動きは鈍いことが多いです。そこで、ひと足早く春を迎えていそうな川を求め、県境を越えて、お隣の群馬県に足を運んでみました。

■川岸の桜並木が満開! 「どこに魚がいるの?」

川岸の桜並木が見事でした。よく見ると、川の中央に黒い水鳥が写っています……

 群馬県高崎市の郊外、中流部は集落と田畑が続く中、幹線道路に沿うように流れる利根川の支流。いわゆる里川の景色が広がっています。満開の桜と相まって景色がピンク色を帯びているような早朝の風景、期待に胸が高鳴ります。

悠々と川面を飛ぶカワウ。泳ぎも上手く、潜水もお手のもの

 似たような流れが続く中流部、最初のポイントを選んだ決め手は「カワウ」でした。水辺に住む魚食性の大型の鳥です。その魚獲り名人っぷりは、魚を急激に減らしてしまう一因にもなっています。漁協の放流魚も食べられてしまう被害も各地で耳にします。野生の嗅覚(視覚)は鋭いです。見えない魚を探すより、(対象魚とは限りませんが)彼らの狙っている流れに当たりをつけた方が確実かもしれません。

 ただ、常にプレッシャーがかかっているので、魚が怯えてしまって釣りにくい場合もあります。自分にとって新しいフィールドで釣りをするとき、魚の居場所を探すのによく参考にしています。

 見た目としても魅力的な流れ込み周辺で釣り始めてみました。案の定、簡単には出てくれませんでしたが、しつこく、少しずつ探っていってようやく一匹、ヤマメの顔を見ることができました。

■芽吹き出した渓谷にカゲロウが舞う

春の渓は明るく輝き、ラインを伸ばしていく作業自体が楽しく、ウキウキしてしまいます

 移動して上流部へ。まだ春の訪れをわずかに感じさせる程度です。それでも木々も少しずつ芽吹きだし、枝先を輝かせています。葉が生い茂る前なので、谷底にも優しい日差しが届いています。陽光を受けた木々の枝が谷の影に浮き立つように輝きを見せ、溢れる生命感を感じずにはいられません。

 晴天の週末、さらに気温も上昇する予報だったせいか、川沿いは釣り人の気配が濃厚です。狙っていた場所は先行者の後ですが、なるべく間隔を空けるようにゆっくりと釣り上がることにしました。

複数の流れがより合う流れ込み。膝下程度で浅いですが、ヤマメがライズしていました

 右へ左へ蛇行する流れに沿いながら遡行します。のんびり気分ですが、小さなライズを見逃すことはありませんでした。さっそく狙いをつけて流すと素直に流れを割ってヤマメが飛び出します。ただ、なかなかフッキング(針がかり)してくれません。フライサイズを小さく(#18)、ティペット(ハリス)も細く(8X)し、より繊細に流してみるとようやく一匹。

マエグロヒメフタオカゲロウ(オス・スピナー)。12mmほどの大型のカゲロウです

 ライズがないポイントでも、この時期の渓流ヤマメが好みそうな場所からは、ポツリポツリと反応がありました。数を釣りたいわけではないので、河原の石に腰掛けてひと休みします。谷を抜ける風が止むと、各種カゲロウを始め虫たちが川面を飛び交っています。陽光煌めく中で湧くように乱舞する光景を眺める至福のひととき。虫に囲まれてニヤニヤしてしまうのは、フライフィッシャーならではの春の感じ方なのかもしれません。

見つけたライズの主は、もう少し大きかったような気がしますが……