■途中から魚たちがいない!?

朝9時の気温は23℃と涼しいですが、意外なほど水量が少ない(平水よりやや少ないくらい)せいでしょうか、水温はすでに13.5℃まで上がっていました。
すっかり色濃くなった森の緑が陽光に透けて輝いています。涼しげな飛沫を上げながら滔々と流れる水にテンションが上がります!
先に釣り始めた同行者のルアーマンがさっそくロッドをしならせていました。丸々と太った良型イワナ。素早くリリースした後、さらに小ぶりのイワナを追加しています。小ぶりといっても24cmくらいあります。幸先のいいスタートに期待しかありません。
しかし、筆者のフライには一向に反応がなく、徐々に焦ってきます。一度だけ小ぶりな魚が顔を見せてくれましたが、フライを加えてくれません。場所を譲ると、同行者が(おそらく)同じ魚を掛けていました。
そうこうしているうちに、同行者にも反応がなくなりました。ルアーにだけ反応がいいケースは往々にしてありますが、そういう訳でもなさそうです。足跡もありませんし、どうやらスレている訳でもなさそうです。行けども行けども静まり返ったまま、水中を走る魚影すら見ません。

本流釣りではなく山奥の渓流ですし、経験上ここまで反応がなく、魚影がないのは時合いだけが理由とは思えません……。いくつか入っている支流に魚の生息を妨げる要素がある影響も考えにくく、なかなか諦めがつきません。次から次へと現れる好ポイントに誘われるようにロッドを振ってしまいます。
■上流の実績ポイントは問題なし!

ようやく諦めがつきました。いったん退渓です。
そこから500mほど上流、枝沢との合流点から上は何度か入ったことがあり、実績もある場所です。しかし、常に魚の反応がいいとは限りません。堰堤で区切られている訳でもない先ほどの場所からは連続した流れです。下での貧果に不安になりながらも再び釣り支度をしていると、先に釣り始めた同行者がいきなり一匹釣り上げていました。しかし筆者のフライには魚は出てきません。

流れの上を行ったり来たり飛んでいた「カワゲラ」を素早く捕まえてみると、カワゲラ(カワゲラの一種で大型)でした。そこでフライもそれをイミテートしたものに結び変えました。そして、魅惑的な反転流の渦にフライをしつこく浮かべていると、ついに待望の一匹目が水面を割りました! なかなかの良型で、流れと相まっていい引きをしてくれます。ようやく手元に寄せてホッと一息、釣りを開始してから約4時間、ついに溜飲を下げることができました。
ストマックポンプで確認するとオドリバエが入っていました。飛んでいるのを見ていましたし、そのパターンを先程までもずっと使っていたのですが……。
そこからは目ぼしいポイントから気前よくイワナたちが飛び出してくれるようになりました。遡行していると足元からも小さめのイワナが走り、魚影の濃さが窺えます。雑に言ってしまえば、バランスさえ良ければフライもなんでも良さそうで、アプローチと狙うポイント、ドリフトさえ悪くなければとにかく魚は飛び出してきます。
ようやく釣れ出して胸を撫で下ろします。釣り、フライフィッシングは自然のサイクルに合わせるしかありませんし、それもまた醍醐味でもあります。しかし、先ほどまで入っていた区間の釣れなさには、いったいどういった理由があるのでしょうか。本当に魚はいなかったのでしょうか。ずっと釣りを続けていれば、いつかは紐解ける日が来るのでしょうか。そんなことを思いながら家路につき、地形図を見返していました。