富士山登山の初心者が登頂を成功させるためには、基礎知識や事前準備をしっかりと整える必要があります。しかし、はじめて挑戦する初心者には「何から準備すればいい?」「体力に自信がないけど大丈夫?」といった不安もあるはずです。
そこで今回は、富士山登山の初心者に向けて、計画の立て方から注意すべきポイントまで網羅した成功ガイドを解説します。
■富士山登山の初心者向け基礎知識

日本一の標高を誇る富士山で初心者が安全に登山するには、しっかりとした準備が欠かせません。とくに山中の天候は変わりやすく、長時間の登山で体力も消耗します。基礎知識なしで登ると、危険を伴う可能性があります。
安全な登山計画を立てるためにも、まずは以下のポイントを理解しておきましょう。
- 山開きと登山期間
- 入山規制時間
- 登山の費用(通行料・入山料)
●富士山の山開きと登山期間
富士山に登山できる期間は「山開き」の期間に合わせて設定されています。一般的な山開きのシーズンは積雪がなくなり、山小屋や救護所などの施設が営業する夏の約2か月間です。
山開きの期間は、登山ルートによって異なります。例えば、2025年の場合は以下のとおりです。
ルート | 開山期間 |
---|---|
山梨県側(吉田ルート) | 7月1日~9月10日 |
静岡県側(須走・御殿場・富士宮ルート) | 7月10日~9月10日 |
●富士山の入山規制時間
富士山登山では、安全確保の観点から特定の時間帯に通行規制が実施されます。とくに山小屋の宿泊予約がない登山者を対象に、五合目登山口ゲートを閉鎖する規制です。
規制の目的は、夜間に休まず山頂を目指す無理な登山スタイルを防ぐことです。十分な休息をとらない登山は、高山病や大きな事故につながる恐れがあります。
規制区間 | 五合目登山口(全ルート共通) |
---|---|
規制時間 | 午後2時~翌午前3時 |
規制対象 | 山小屋の宿泊予約がない登山者 |
参考:2025年 富士登山をするすべての方へ|富士登山オフィシャルサイト
●富士山登山の費用(通行料・入山料)
富士山では環境保全や登山者の安全確保のため、登山口で以下の費用を徴収しています。
入山料 | 4,000円/人(全ルート共通) |
---|
参考:2025年 富士登山をするすべての方へ|富士登山オフィシャルサイト
以前までは「通行料」「入山料」の2種類の費用に分かれていましたが、2025年から各ルート共通で入山料(4,000円)に一本化されました。また、任意で徴収していた協力金(1,000円)は廃止されています。
■富士山登山の初心者向けルートと標準登山時間

引用元:https://fujisan-climb.jp/trails/index.html
富士山には4つの登山ルートがあり、それぞれ所要時間や難易度が異なります。
- 吉田ルート(山梨側)
- 須走ルート(静岡側)
- 御殿場ルート(静岡側)
- 富士宮ルート(静岡側)
初めて登るのであれば、山梨県側の吉田ルートがおすすめです。各ルートの特徴を理解し、所要時間や体力に応じた無理のない登山計画を立てることが大切です。
●吉田ルート(山梨側):登り 約6時間 / 下り 約4時間
吉田ルートは、富士山登山を目指す初心者にとって最も人気が高く、安心して挑戦しやすいルートのひとつです。
吉田ルートの魅力は、山小屋と施設の充実度です。七合目から八合目にかけて多くの山小屋があり、休憩場所やトイレに立ち寄りやすい安心感があります。体力に不安がある人でも、こまめに休みを取りながら登山を進めることができます。さらに、救護所も設置されているため、万が一の体調不良時にも安心です。
登りと下りでルートが分かれているため、登山者同士のすれ違いによる混雑や危険が軽減されている点も人気となっているポイントです。ただし、週末やお盆などの繁忙期には登りで渋滞が発生する時もあります。
標準的な登山時間は、登りが約6時間、下りが約4時間。景色を楽しみながら、安心感を持って登れる点が吉田ルート最大のメリットです。はじめての富士山登山には、まずは吉田ルートを選ぶのがおすすめです。
●須走ルート(静岡側):登り 約7時間 / 下り 約4時間
須走ルートは、富士山の豊かな自然を満喫しながら登りたい人におすすめのルートです。本八合目まで樹林帯を歩く区間があり、夏の強い日差しを避けて体力を温存しながら歩けます。
また、吉田ルートに比べて登山者が少ないため、比較的静かな山歩きが可能です。山小屋もいくつかあるので、初心者向けの登山計画も立てやすいです。ただし、樹林帯は見通しがきかず、霧が発生した際には道迷いに注意が必要です。本八合目以降は吉田ルートに合流します。
須走ルートの名物は、下山時の「砂走り」です。火山砂利の急斜面を駆け下りる体験は、別ルートでは味わえない爽快感があります。ただし、砂埃がひどいため、砂の侵入を防ぐスパッツやマスクなどの装備があると安心です。
標準的な登山時間は、登りが約7時間、下りが約4時間ほどかかります。変化のある自然景観を満喫しながら、登山を楽しみたい方におすすめのルートです。
●御殿場ルート(静岡側):登り 約9時間 / 下り 約4時間
4つの登山道でもっとも距離が長く、標高差も最大の御殿場ルート。初心者には推奨されていないルートです。スタート地点の標高が他ルートより低いため、山頂まで登りの標準時間は約9時間とされています。長時間に及ぶ登山においては、体力の個人差によって時間の差異も大きくなるので、十分に余裕を持たせた計画を立てる必要があります。
御殿場ルートは、山小屋の数が少ないのも特徴です。各休憩ポイントの間隔が長いため、入念な計画と十分な水分・食料の準備が求められます。下山道には、「大砂走り」と呼ばれる長く急な火山砂利の斜面を進む場所もあり、体力の消耗が大きくなります。富士山登山に複数回挑戦し、経験を積んでから選ぶべきルートと判断するのが賢明です。
一方で、他ルートと比べて登山者が少ないため、静かな富士山の自然を満喫できるという魅力もあります。広大な富士山の自然を独り占めするように、静かな登山を楽しめる穴場的なルートです。
●富士宮ルート(静岡側):登り 約5時間 / 下り 約3時間
4つの登山道でもっとも距離が短い富士宮ルート。山頂までの登り時間が約5時間と短く、最短時間で到達できるルートです。
ただし、距離が短い反面、岩場が多く、急勾配の箇所もあります。登りと下りで同じ登山道を使用します。
距離と時間から吉田ルートに次いで登山者の多いルートですが、道幅が狭い場所ではすれ違いに時間がかかりやすく、自分のペースを保ちにくい難しさも。混雑時には譲り合いのマナーで、岩場や下山時の転倒には特に注意が必要になります。
スタート地点である五合目の標高が約2,400mと高いため、高度に慣れる前に登りはじめると高山病のリスクが高まります。五合目でゆっくり滞在して、高度順応してから出発しましょう。
■富士山山頂の情報|お鉢巡りや剣ヶ峰について

富士山の登頂後は、巨大な火口の周りを歩く「お鉢巡り」や、最高地点である「剣ヶ峰」への到達にもぜひチャレンジしたいところ。
また、山頂には神社や日本最高所にある郵便局もあり、登頂記念のお守りを購入したり、特別な消印付きの手紙を出したりできます。体力と時間に余裕があれば、山頂ならではの特別な体験を楽しみましょう。
●富士山山頂の火口淵を一周する「お鉢巡り」
お鉢巡りとは、富士山山頂にある巨大な噴火口の縁を一周するコースです。火口は直径約800m、深さ約200mにもおよび、壮大さを間近に感じられます。
所要時間は、およそ90分で、天候が良ければ南アルプスや八ヶ岳などの山々を360度の大パノラマで楽しめる絶景が広がります。
しかし、山頂は風が強く、天候が急変しやすいため、いつでも気軽に楽しめるわけではありません。コースにはアップダウンがあるため、その時の体調や体力の見極めも大切です。少しでも疲れを感じる場合には無理をせず、安全を最優先に行動を決めるようにしましょう。
●富士山山頂にある日本最高峰地点「剣ヶ峰」
標高3,776mを誇る日本の最高地点「剣ヶ峰」。富士山の山頂火口の縁、お鉢巡りのルート上に位置しており「日本最高峰富士山剣ヶ峰」と刻まれた石碑が立っています。
富士山の登山者には、剣ヶ峰を目指す人も少なくありません。石碑での記念撮影は、登頂を成し遂げた証として一生忘れられない思い出になるはずです。
ただし、登頂後はもちろん、慣れない山小屋泊などで十分に疲れが取れていないことなども考えられます。下山に備えて、体力や体調には十分に考慮しましょう。日本一の高さからの眺めは格別ですが、決して無理はせず、安全を最優先に判断するようにしましょう。
●富士山山頂の「富士山頂上浅間大社奥宮」
富士山の山頂には、浅間神社の総本宮「富士山本宮浅間大社」の奥宮があります。登頂者だけが参拝できる特別な場所であり、以下の2か所に鎮座しています。
- 富士宮・御殿場ルートの山頂にある「浅間大社奥宮」
- 吉田・須走ルートの山頂にある「久須志神社」
無事に登頂できた感謝を伝え、安全な下山を祈願する登山者で賑わう場所です。いずれも開山期間中のみ開所しており、登頂記念の御朱印やお守りをいただけます。
さらに、日本で最も高所にある「富士山頂郵便局」も併設されており、ここでしか押せない特別な風景印を押した手紙やはがきを送ることができます。登山の思い出として非常に人気のスポットです。
■富士山登山の山小屋情報

ここからは、富士山の登山ルート別に山小屋の情報を紹介します。宿泊や休憩地点の計画の参考にしてください。
吉田ルートと須走ルート、御殿場ルートは五合目以上から、富士見ルートは七合目以上からご来光が見られます。富士山登山初心者は山小屋泊して、山小屋からご来光を見る計画がおすすめです。
●吉田ルートの山小屋
吉田ルートには山小屋が建ち並んでおり、登山計画に合わせたポイントで山小屋泊を組み込むことができます。途中の休憩場所やトイレに困る心配がほとんどなく、体調不良時に避難できる場所があるのは初心者にとって魅力的です。
八合目以上は、須走ルートと合流するため、八合目以上の山小屋は須走ルートもご確認ください。
位置 | 名称 | 受付方法 | |
---|---|---|---|
Web | Tel | ||
富士スバルライン五合目 | 富士山みはらし | ◯ | ◯ |
富士スバルライン五合目 | 雲上閣 | ◯ | × |
富士スバルライン五合目 | 小御岳茶屋 | ー | ー |
五合目 | 佐藤小屋 | ◯ | ◯ |
六合目 | 里見平★星観荘 | ◯ | × |
七合目 | 花小屋 | × | ◯ |
七合目 | 日の出館 | × | ◯ |
七合目 | 七合目トモエ館 | ◯ | ◯(当日、前日のみ・10:00~17:00) |
七合目 | 鎌岩館 | ◯ | × |
七合目 | 富士一館 | ◯ | × |
七合目 | 鳥居荘 | ◯ | × |
七合目 | 東洋館 | ◯ | × |
八合目 | 太子舘 | ◯ | × |
八合目 | 蓬莱館 | ◯ | × |
八合目 | 白雲荘 | × | ◯ |
八合目 | 元祖室 | ◯ | × |
本八合目 | 富士山ホテル | ◯ | × |
本八合目 | 本八合目トモエ館 | ◯ | ◯(当日、前日のみ・10:00~17:00) |
●須走ルートの山小屋
須走ルートの山小屋は数こそ多くないものの、各ポイントにバランスよく配置されており、無理のない登山計画を立てやすいのが特徴です。八合目以上は、吉田ルートと合流します。
位置 | 名称 | 受付方法 | |
---|---|---|---|
Web | Tel | ||
五合目 | 山荘菊屋 | ◯ | ◯ |
五合目 | 東富士山荘 | × | ◯ |
砂払五合目 | 吉野屋 | ◯ | ◯ |
六合目 | 長田山荘 | × | ◯ |
本六合目 | 瀬戸館 | ◯ | ◯ |
七合目 | 大陽館 | ー | ー |
本七合目 | 見晴館 | × | ◯ |
八合目 | 江戸屋(下江戸屋) | ◯ | ◯(3日前からの直前予約のみ) |
本八合目 | 胸突江戸屋(上江戸屋) | ◯ | ◯(3日前からの直前予約のみ) |
八合五勺 | 御来光館 | ◯ | ◯ |
山頂 | 扇屋 | ー | ー |
山頂 | 山口屋 | ー | ー |
●御殿場ルートの山小屋
4つの登山道で山小屋の数がもっとも少ないのが御殿場ルートです。七合九勺より上は山頂の山小屋を利用することになります。御殿場ルートは日陰のない砂利道が続くハードなルートです。必ず山小屋の情報や位置を確認し、宿泊や休憩を取るようにして下さい。
位置 | 名称 | 受付方法 | |
---|---|---|---|
Web | Tel | ||
新五合目 | 大石茶屋 | ー | ◯ |
新六合目 | 半蔵坊 | ◯ | ◯ |
七合四勺 | わらじ館 | ◯ | ◯ |
七合五勺 | 砂走館 | ー | ◯ |
七合九勺 | 赤岩八合館 | ー | ◯ |
●富士宮ルートの山小屋
富士宮ルートは山頂までの距離が比較的短い反面、傾斜が急なため体力を消耗しやすいルートです。そのため、各合ごとに配置された山小屋をうまく活用しながら、無理のないペースで登ることが重要です。こまめな休憩が高山病予防にもつながります。
位置 | 名称 | 受付方法 | |
---|---|---|---|
Web | Tel | ||
六合目 | 雲海荘 | ◯ | ◯ |
六合目 | 宝永山荘 | ◯ | ◯ |
新七合目 | 御来光山荘 | ◯ | ◯ |
元祖七合目 | 山口山荘 | ◯ | ◯ |
八合目 | 池田館 | ◯ | ー |
九合目 | 万年雪山荘 | × | ◯ |
九合五勺 | 胸突山荘 | ー | ◯ |
山頂 | 頂上富士館 | ◯ | ◯ |
■富士山登山のマイカー規制・アクセス・駐車場情報

車で富士山に向かう場合は、事前に道路状況や駐車場の場所を確認しておくことが大切です。ここからは、マイカー規制の期間や各登山口ごとのアクセス方法、駐車場の情報について詳しくご紹介します。
●2025年マイカー規制期間
富士山のマイカー規制期間は、おおむね7月上旬から9月上旬までの約2か月間です。規制期間中は、すべての自家用車(自動二輪を含む)が五合目まで通行できません。
▼スクロールできます
ルート | マイカー規制実施期間 | 乗換駐車場 | 通行料金(普通車) |
---|---|---|---|
富士スバルライン (吉田ルート) |
2025年7月4日(金)18時~ 2025年9月10日(水)18時 | 富士山パーキング | 往復2,100円 (一部区間は640円) |
ふじあざみライン (須走ルート) |
2025年7月10日(木)9時~ 2025年9月10日(水)18時 | 須走多用途広場 | 無料 |
県道富士公園太郎坊線 (御殿場ルート) |
なし | ー | 無料 |
富士山スカイライン (富士宮ルート) |
2025年7月10日(木)9時~ 2025年9月10日(水)18時 | 水ヶ塚駐車場 | 無料 |
●富士山登山のアクセス・駐車場
富士山登山を計画する際は、アクセス方法や登山口周辺の駐車場情報を事前に確認しておくと安心です。登山ルートによって最寄りの交通手段や駐車場の場所が異なるため、スムーズな行動のためにも事前のチェックが欠かせません。
吉田ルートのアクセス・駐車場
吉田ルートにマイカーでアクセスする場合は、以下いずれかのルートから「富士スバルライン(有料道路)」を利用します。
- 高速道路中央自動車道河口湖IC
- 東富士五湖道路富士吉田IC
- 国道139号
利用できる駐車場および駐車料金については、マイカー規制期間によって以下のように異なります。
マイカー規制期間 | 駐車場 | 駐車料金 |
---|---|---|
期間外 | 登山口(富士スバルライン五合目) | 無料 |
期間内 | 富士山パーキング(富士北麓駐車場) | 有料(1台:1,000円) |
マイカー規制期間外であれば、登山口となる五合目まで自家用車でたどり着けます。しかし、マイカー規制期間中は富士吉田IC近くにある「富士山パーキング」に車を停めるため、五合目行きのシャトルバスに乗り換えが必要です。
須走ルートのアクセス・駐車場
須走ルートにマイカーでアクセスする場合は、以下いずれかのルートから「ふじあざみライン」を利用します。
- 富士五湖道路の須走IC
- 国道138号
また、ふじあざみラインは、11月中旬から翌4月下旬まで閉鎖期間を設けています。開通・閉鎖期間の詳細は、静岡県HPをご参照ください。
年度 | 開通日 | 閉鎖日 |
---|---|---|
令和5年度(2023年度) | 4月28日 | 11月10日 |
令和6年度(2024年度) | 4月26日 | 11月19日 |
令和7年度(2025年度) | 4月25日 | 未定 |
利用できる駐車場および駐車料金については、マイカー規制期間によって以下のように異なります。
マイカー規制期間 | 駐車場 | 駐車料金 |
---|---|---|
期間外 | 登山口(須走口五合目) | 無料 |
期間内 | 須走多用途広場 | 無料 |
マイカー規制期間中は「須走多用途広場」から、五合目行きのシャトルバスに乗り換えが必要です。
御殿場ルートのアクセス・駐車場
御殿場ルートにマイカーでアクセスする場合は、以下いずれかのルートで「御殿場口新五合目」に向かいます。
- 東名高速道路御殿場IC→「富士山スカイライン」
- 東名高速道路富士IC→「西富士道路」→国道139号→「富士山スカイライン」
- 新東名高速道路新富士IC→「西富士道路」→国道139号→「富士山スカイライン」
- 東名高速道路裾野IC→「エバーグリーンライン」→「富士山スカイライン」
また、新五合目に通じる「県道富士公園太郎坊線」は、11月中旬から翌4月下旬まで閉鎖期間を設けています。開通・閉鎖期間の詳細は、静岡県HPをご参照ください。
御殿場ルートは、マイカー規制期間を設けていません。一般道の開通期間内であれば、御殿場口新五合目の駐車場を利用できます。
富士宮ルートのアクセス・駐車場
富士宮ルートにマイカーでアクセスする場合は、以下いずれかのルートで「富士宮口五合目」に向かいます。
- 東名高速道路御殿場IC→「富士山スカイライン」
- 東名高速道路裾野IC→「エバーグリーンライン」→「富士山スカイライン」
- 東名高速道路富士IC→西富士道路→国道139号→「富士スカイライン」
- 新東名高速道路新富士IC→西富士道路→国道139号→「富士スカイライン」
また、五合目に通じる「富士山スカイライン」は、11月中旬から翌4月下旬まで閉鎖期間を設けています。開通・閉鎖期間の詳細は、静岡県HPをご参照ください。
利用できる駐車場および駐車料金については、マイカー規制期間によって以下のように異なります。
マイカー規制期間 | 駐車場 | 駐車料金 |
---|---|---|
期間外 | 登山口(富士宮口五合目) | 無料 |
期間内 | 水ヶ塚駐車場 | 有料(1台:1,500円/平日
2,000円/土日祝・お盆) |
マイカー規制期間中は「水ヶ塚駐車場」から、五合目行きのシャトルバスに乗り換えが必要です。
■富士山登山の初心者が登頂成功するために必要な体力

富士山登頂には、特別な技術は不要ですが、長時間の歩行に耐える体力は安全に登山を楽しむために欠かせません。
コースによって差はありますが、富士山登山では往復で約10km以上の距離を10時間近くかけて歩き続ける体力が必要です。標高差も1,000m以上あり、平地のウォーキングとは違って酸素の薄い環境で登るため、身体への負荷も大きくなります。
富士山登山に必要な体力をつけるため、また整地と違って歩きづらい山道を知るためにも、事前に登山やハイキングに行くようにしましょう。日頃から適度に体を動かし、少なくとも1時間ほどのウォーキングや階段の上り降りを苦にせず継続できることを目安に、基礎体力を養っておくことが、登頂成功への第一歩です。
■富士山登山の初心者向け登頂成功のコツ

ここからは、富士山の登山初心者が安全に登頂を成功させるための5つのコツを紹介します。無理のないルート選びから高山病対策まで、万全の準備で富士山登山に挑戦しましょう。
●自分に合った登山ルートと計画を立てよう
富士山登山を成功させるコツは、自分の体力や経験に見合った登山ルートとスケジュールを選ぶことが大切です。富士山には4つの主要ルートがありますが、初心者には山小屋の数が多く、道も整備されている「吉田ルート」が特におすすめです。
また、無理のないスケジュールを組むことで、高山病のリスクも軽減できます。山小屋で1泊することで体を高度に慣らしながら登りましょう。しっかりとした計画を立てて、余裕を持った登山を目指しましょう。
●初心者は天候と混雑を避けた時期を選ぼう
富士山登山の初心者は、以下のシーズンを選ぶのがおすすめです。
- 梅雨明けで天候が安定しやすい7月下旬
- お盆休みの混雑を避けた8月下旬
7月上旬の山開き直後は、梅雨が明けきらずに悪天候に見舞われる可能性があります。悪天候時の登山は危険を伴うので、天候が安定しやすい時期を選びましょう。
また、8月中旬のお盆休みや週末は登山道が混雑しやすく、自分のペースで登れずに疲労が増すことも。混雑や天候を避けることで、初心者でも余裕をもって富士登山に挑めます。
●高山病対策を心がける(焦らずゆっくりと)
富士山登山では、高山病への対策がとても重要です。標高が上がるにつれて空気が薄くなる環境に順応できないと、以下のような身体の不調が起こります。
- 頭痛
- 吐き気
- めまい
- 倦怠感
高山病は、体力や年齢に関係なく誰にでも発症する可能性があります。対策としては、前日にしっかりと睡眠をとること、自分のペースで登ることが基本です。標高が高くなるほどこまめな休憩をとって身体を慣らし、無理を感じたら下山しましょう。
また、脱水が高山病を悪化させることもあるため、水分補給も重要です。2L程度の飲み物を持参し、少しずつこまめに飲むように意識しましょう。
●天気をチェックして無理はしない
富士山登山を成功させるには、天候チェックを怠らないことも成功と安全のカギを握ります。天候の悪化は予想以上に体力を消耗し、集中力の低下を招きます。
山の天気は「変わりやすい」といわれますが、富士山のような高山ではその変化が顕著です。麓の天気が快晴で暑くても、山中では突然の豪雨や寒さを感じるほどの強風に見舞われることも少なくありません。状況によっては低体温症といった深刻な事態や、転倒による滑落などの命に関わる事故にもつながりかねません。
登山当日に強風や雨が予想される場合は、無理をせずに計画を延期する判断も重要です。「勇気ある撤退」は、次の挑戦につながる賢明な選択です。安全を最優先に考え、無理のない登山を心がけましょう。
■富士山登山の初心者が準備する持ち物・装備

富士山の登山を安全に楽しむためには、専用の持ち物や装備の準備が欠かせません。ここからは何を用意すればよいか迷ってしまう初心者に向けて、準備すべき持ち物・装備を紹介します。
富士山の登山を安全に楽しむためには、適切な持ち物と装備の準備が必要です。特に初心者にとっては、どこまで準備すれば安心なのか悩むポイントでもあります。ここからは、登山前に用意すべき基本の装備を紹介します。
●富士山登山の服装
富士山登山の服装は、3層の「重ね着」するのが基本です。
- ベースレイヤー(肌に直接触れる服)
- ミドルレイヤー(中間着)
- アウターレイヤー(上着)
肌に直接触れる「ベースレイヤー(肌着)」は、汗を吸収して肌の表面をドライに保つ役割があります。汗で濡れたままの身体は冷えるため、吸汗と速乾性に優れたものを選びましょう。
ベースレイヤーの上には、体温を保つ「ミドルレイヤー(中間着)」を着用します。ベースレイヤ―からの汗や湿気を外側へ逃がし、服装の中を快適に保つ役割があります。撥水性を備えたものや防寒性を重視して作られたものなど、機能は多岐にわたります。そして「アウターレイヤー」は外側からの寒さや風から身を守り、こもった熱や湿気を排出できる、ベンチレーションが備わったものを選びましょう。
パンツは、伸縮性に優れたトレッキングパンツを選びましょう。雨天時には上からレインパンツを履くことも考え、適度なフィット感があるものを選びます。膝や腰まわりの動かしやすさやも確認しましょう。
天候の変化に対応できる服装が、安全な登山のカギになります。登る季節や気温、自分の体質を考慮して最適な服装を選びましょう。
●富士山登山の持ち物・装備
富士山登山には、安全を確保するための必須アイテムがいくつかあります。とくに以下のアイテムは、出発前に必ず確認して忘れないようにしましょう。
持ち物・装備 | 概要 |
---|---|
バックパック | 20~30Lサイズ(荷物の量に合わせる) |
登山靴(トレッキングシューズ) | 足首まで覆うハイカットモデル |
雨具(レインウェア) | ズボンと上着に分かれたセパレートタイプで防水透湿性があるもの |
防寒着 | フリース、セーター、ダウンジャケットなど。機能性をよく確認すること |
帽子 | 熱中症や日焼け防止のため |
ライト | 両手が使えるヘッドランプ |
水 | 高山病対策にも役立つので2L以上を推奨 |
行動食 | 塩分タブレットやカロリーが高い行動食 |
ゴミ袋 | 登山中のゴミを持ち帰るため |
小銭 | トイレのチップ用に100円硬貨が必要・山小屋や休憩所の支払いにカードは使用不可 |
地図 | ルート確認に必須 |
●富士山登山であると便利なグッズ
必須の持ち物・装備に加えて、以下のグッズを持っていくと富士山登山の快適性や安全性が向上します。荷物の重量とのバランスを考えながら、自分に必要なものを選んで準備しましょう。
あると便利なグッズ | 概要 |
---|---|
トレッキングポール | 下山時にかかる足腰への負担を軽減できる |
スパッツ(ゲイター) | 登山靴の上から足首周りを覆うカバー・靴の中に砂利や雨の侵入を防ぐ |
手袋・グローブ | 登山中のケガ防止に活用できる・防寒対策にもなるものだと便利 |
耳栓・アイマスク | 翌朝の疲労を和らげるためにも睡眠の改善が重要 |
ウエットティッシュ | 登山中は水道水が使えないためウェットティッシュがあると便利 |
トイレットペーパー | 山小屋のトイレに備え付けがない場合に使用・ティッシュ代わりにも便利 |
●富士山登山用品のレンタル情報
富士山登山の持ち物・装備をすべて買い揃えると、数万円かかることも珍しくありません。用具で負担を感じる初心者には、登山用品のレンタルサービスが便利です。
レンタルサービスを活用すれば、年に数回しか使わないアイテムの保管場所にも困りません。オンラインで注文できる『やまどうぐレンタル屋』など、多くのレンタルショップがあり、必要なアイテムやセットプランを手軽に利用できます。
レンタルなら使用頻度の低い装備の保管場所に困ることもなく、経済的かつ効率的に登山準備ができるためおすすめです。まずは各レンタルショップのウェブサイトをチェックしてみましょう。
■富士山登山の初心者が注意したいことやルール・マナー

富士山登山の初心者が注意したいルールやマナーについて解説します。ルールやマナーは自分自身の安全を守るためだけでなく、ほかの登山者への配慮や自然環境の保護にも欠かせない観点です。
●富士山を守るためにゴミは必ず持ち帰ろう
富士山登山では、自分で出したゴミはすべて持ち帰るのが基本マナーです。富士山の登山道や山頂には、ゴミ箱が一切設置されていません。
食べ物の包装、飲み物の容器、使用済みのティッシュなど、小さなゴミも見逃さずに持ち帰りましょう。あらかじめゴミ袋を用意し、登山中に出たゴミをまとめられるようにしておくことが大切です。
●正規の登山道を外れず安全に歩こう
富士山登山では、整備された正規の登山道を歩くことが鉄則です。無理な追い抜きやショートカットをするために、近道に見える場所や歩きやすそうな脇道など、入りたくなる場面もあるかもしれませんが、それは非常に危険な行為です。
道迷いや滑落のリスクが高まるだけでなく、富士山の自然環境にも悪影響を与えてしまいます。現在地を把握できなくなる危険もあるため、必ず決められたルートを歩きましょう。
●登山道ですれ違う際は登り優先が基本
多くの登山者が行き交う富士山では、登山道での譲り合いが重要です。登山道ですれ違う際には、「登り優先」が登山マナーの基本とされています。
注意力を要する下りでは、前方に立ち止まっている登山者が気になると、足を滑らせ、踏み外しの原因となりやすくなります。バランスを崩すと待機している登りの登山者を巻き込むことにもなりかねません。
斜面の谷側ではなく山側に立つようにして、登りの人が通り過ぎるのを静かに待ちましょう。
●体調不良を感じたら勇気をもって下山する
登山中に頭痛や吐き気といった体調不良を感じたら、無理をせず下山する判断がとても重要です。体調不良の症状は高山病の初期症状である可能性が高く、無理をしても自然に回復することはほとんどありません。
異変を感じたらバックパックを下ろして深呼吸をし、水分補給をしながら様子を見ましょう。症状が改善しない場合は、迷わず下山することが安全確保につながります。登頂よりも、無事に帰ることを第一に考えましょう。
■富士山登山の初心者が登頂成功を目指すならツアーもおすすめ

はじめて富士山登山に挑戦する初心者には、登山ツアーへの参加がおすすめです。ツアーには安全に登頂を目指せるプランと環境が整っているため、個人で計画を立てる不安も解消できます。
登山口までの往復バスや山小屋の予約、詳細なスケジュール管理などをすべてツアー会社に任せられるのも大きなメリットです。登山ガイドは、安全管理のプロフェッショナルです。体調不良やアクシデントにもすぐ対応してもらえる安心感があります。また、経験豊富な登山ガイドが同行するので、登山に集中できる環境が整っているため、初心者でも登頂成功の可能性が高まるでしょう。
■富士山登山の初心者が登頂成功後に訪れたい周辺スポット

富士山登山を無事に成功させた初心者の方は、その達成感を味わいつつ、富士山周辺の魅力にも触れてみませんか?ここでは登山後のリフレッシュにぴったりなスポットを紹介します。
●河口湖
河口湖は、海外客も多く訪れるほどの富士山周辺でも有数の観光スポットです。富士急行線の終着駅でもある河口湖駅からのアクセスもよく、とくに吉田ルートで下山後に立ち寄りやすい場所にあります。
河口湖の湖畔からは、雄大な富士山の姿をさまざまな角度から見られます。風のない穏やかな日には、湖面に映る「逆さ富士」の絶景が見られるのも注目ポイントです。
●山中湖
山中湖は、富士五湖でもっとも面積が広い湖です。河口湖の賑やかな雰囲気とは対照的に、より落ち着いた自然を満喫できる魅力があります。
夏でも平均気温が20℃前後と涼しく、登山後のクールダウンに静かな環境で過ごしたい人にもおすすめのスポットです。須走ルートや御殿場ルートからアクセスしやすいエリアに位置しています。
●ふじやま温泉
富士山登山で疲れた身体を芯から癒すなら、日帰り温泉施設「ふじやま温泉」がおすすめです。富士急ハイランドに隣接しており、富士山パーキングから立ち寄りやすい場所にあります。
露天風呂からは、もちろん富士山の雄大な姿を望めます。頑張って登った山を眺めながら湯船に浸かる時間には、格別の達成感を味わえるはずです。
■富士山登山の初心者から多い質問【Q&A】

富士山に初めて挑戦する初心者にとっては、登山に関する不安や疑問が多いものです。ここでは、富士山登山を計画するうえで特に初心者からよく寄せられる質問にQ&A形式でわかりやすくお答えします。
●Q. 富士山は初心者が日帰りで登れる山ですか?
富士山は初心者が日帰りで登れる山ではありません。夜通しで山頂を目指す登山は「弾丸登山」と呼ばれ、深刻な事故につながるリスクが高まります。
富士山が宿泊予約のない登山者を規制しているのは、弾丸登山のリスクに配慮しているからです。安全に登頂を成功させるためにも、余裕のあるスケジュールを組みましょう。
●Q. 富士山まで車で行く場合、駐車場はありますか?
富士山五合目の登山口に駐車場があります。ただし、夏の登山シーズンは、環境保全と交通渋滞の緩和を目的とした「マイカー規制」が実施されるため注意が必要です。
マイカー規制期間は、指定の駐車場を利用します。登山計画を立てる際は「富士登山オフィシャルサイト」をチェックしましょう。
●Q. 山小屋の宿泊は予約が必要? お金はかかりますか?
富士山の山小屋に宿泊する場合は、事前予約が必要です。また、宿泊料金もかかります。
山小屋の収容人数には限りがあるため、登山者が集中する週末やお盆の時期はすぐに予約が埋まってしまいます。登山ルートと日程が決まったら、できるだけ早く山小屋の予約手続きを進めましょう。
■富士山登山の初心者は万全の準備で登頂成功しよう
富士山登山は、しっかりと準備をすれば初心者でも登頂を目指せる挑戦です。服装や持ち物、体調管理など基本を押さえることで、安全かつ快適な登山が可能になります。
また、自然環境を守るためのルールやマナーも大切です。この記事を参考に、万全の準備で富士山登山に臨み、かけがえのない達成感と感動を味わいましょう。