アウトドアを安全に楽しむために欠かせないのが、ファーストエイドキットだ。転倒による擦り傷、虫刺され、体調不良…… 自然の中では、ちょっとしたトラブルが命取りになることもある。
筆者は2014年より山岳ガイドとして従事しており、主に低山登山をはじめ、釣りやキャンプなど自然を楽しむアウトドアに取り組んでいる。ファーストエイドは、そうした現場でのトラブル対応の初期段階において、重要な役割を担うため、応急処置に関する講習も定期的に受講し、備えを見直すようにしている。
本記事では、日帰り〜1泊程度の一般的なアウトドア活動(低山登山、ハイキング、キャンプなど)にて、筆者が携行している中身を紹介するとともに、これだけは持っておきたいアイテムをいくつか取り上げる。
■アウトドアでは「もしも」が現実になる、その時どうする?
自然の中で過ごす時間は、癒しや冒険に満ちている反面、思わぬトラブルと隣り合わせでもある。ハイキング中の転倒、キャンプ場での火傷、渓流釣りでのすり傷や虫刺されなど、アウトドアフィールドでは「まさか」が突然やってくる。
そんな“もしも”に備えた準備が、自分や仲間の安全を守る第一歩だ。最低限の処置ができるだけで、安心感と行動の選択肢が大きく変わってくるので、ぜひ身につけておこう。
■筆者が実際に携行しているファーストエイドキットの中身

筆者が普段から携行しているファーストエイドキットの中身を紹介する。特筆すべきものはなく、身近な道具や市販品を工夫して取り入れているのが特徴だ。状況や季節、行き先によって多少の入れ替えはあるが、どれも現場での実用性を重視したアイテムばかりだ。


毛抜き/トゲなど、細かな異物を抜く際に重宝する。5円玉と併せて使用するとよい
5円玉/トゲが刺さったとき、穴を患部に押し当てることで抜けやすくなる。筆者も実際に何度か使用した経験がある
小型ハサミ/ガーゼやテープを適切なサイズにカットする際に便利
安全ピン/三角巾の固定や水脹れ処置に使える。針先はライターで消毒してから使用する
ゴム手袋/出血している患部を処置する際に、感染症リスクを避けるための基本的な対策として使用する
穴あきペットボトルキャップ/予備(未開封)の飲料水と組み合わせて、傷口洗浄に
ポイズンリムーバー/虫刺されなどの際に患部の毒素を吸い出す応急処置ギア。早期の使用で刺された痕が残りにくくなる
ポビドンヨード液が主成分のうがい薬/ポビドンヨード液はうがい薬に使われるほか、手術時の消毒など医療現場でも利用されている。裂傷時の応急処置用として携帯しておきたい
ライター(使い捨て式)/ギアの消毒など多用途に使用できる。確実に点火するシンプルなものを用意しておく

テーピングテープ/固定用(白色)と伸縮タイプ(肌色)があり、肌色タイプは120〜140%という筋肉に近い伸縮率を持つ。そのため、筋肉の流れに沿って貼ることで動きをサポートでき、運動後のケアだけでなく、行動中に疲労を感じた場合には早めに使用することで、症状の悪化を防ぐ助けにもなる
絆創膏・ガーゼ/軽度の傷を保護し、消毒後に清潔を保つ
三角巾/骨折時の固定や止血など、幅広く応用可能

経皮鎮痛消炎剤/打撲や筋肉痛に対応する塗布タイプの鎮痛薬
ステロイド系抗炎症薬/かゆみや赤み、炎症を抑える外用薬。虫刺されやかぶれなどに素早く対応できる
皮膚疾患・外傷治療薬/擦過傷や湿疹など、皮膚トラブル全般に備えて1本は入れておきたい
清涼感のある虫刺され薬/虫刺されや打ち身に効く定番薬。清涼感があり、塗布後の爽快感とともに症状がやわらぐ感覚があるため、応急処置としても頼れる存在。個人的にも使用感が気に入っており、常備している
簡易トイレキット/予期せぬ緊急時の排泄に備えるための道具。携行性の高いタイプを選んでおくと安心
エマージェンシーシート/動けなくなった時、体温低下を防ぐ保温シート。特に秋・冬、森林限界(1,500m)を超える登山の場合はシーズンを通して
ホイッスル/非常時、人の声が通らない環境で自分の存在を知らせる手段として有効。不規則に吹くことにより動物除けにも役立つ
ファーストエイドバッグ(防水)/すべてのアイテムをまとめて携行。各メーカーから色々なタイプが販売されている
膝用サポーターベルト/筆者はファーストエイドキットとは別に、登山ツアーなどで備えとして2組を携行。ズボンの上からでも装着でき、膝がガクガクした際にすばやく対応できる