■堰堤の溜まりでライズ発見! 高活性のイワナたちが待っていた

大きな堰堤に行く手を阻まれました。その下の溜まりは一見浅そうに見えますが、底に大きな石がいくつか沈んでいて場所によっては深く、良型イワナたちが潜んでいそうです。しばらく観察していると、さざ波の下に揺らめく魚影が見えます。小さいものが多いですが、なかには尺を超えるような大物も岩陰から水面をうかがっています。
ちらほらと数種類のカゲロウが飛び交っており、ときおり奥の方でライズが起こっています。ドライフライ(水面上や半沈み状態で使うタイプ)に変えるべくリーダーシステムを結び変えていると、さっそく釣り始めていた同行者が、ルアーを追ってくる魚たちに興奮しています。見ていると、チェイスはあるもののなかなかフッキングしないようです。たまに当たってもショートバイトすぎてすぐにフックアウトしてしまっています。

次は筆者の番です。16番のフックに巻いたCDCソラックスダン(カゲロウを模したドライフライの一種)をそっと水面に落とし漂わせてみると、水中の影が垂直に浮上してきて迷うことなくフライを咥えました。場を荒らさないように身を屈めながらネットに入れます。素早く写真を撮ってリリースし、濡れたフライを交換してから流すとさらにもう一匹! ライズはまだまだ続いています。
■まるで釣り堀! フライ初心者でも釣れるパラダイス

ふと振り返ると同行者が微妙な表情をしています。次々とドライフライに飛び出すイワナに歓声を上げながら、どこかつまらなさそう……。そこで急遽レクチャーしてフライロッドを握らせてみました。
前後左右の開けたオープンスペースでロッドは振りやすく、初心者でもラインを伸ばせます。フライ特有のキャスティングの力加減に苦戦していましたが、ついに数メートル先の良さそうな場所にフライが落ち……、と思ったらいきなり水面が割れました。しかし簡単には合わせられません。それでも何回か合わせ損なううちに、ついにしっかりとフッキングさせました。ルアーとは違うフライロッドでのやり取りに慌てていましたが、そっとネットで掬ってあげます。ついで2匹目。今度は自分自身で無事にネットイン! 入れ食い状態で、どうやらドライフライの釣りにすっかり虜になっているよう。こうなるともう僕のフライロッドは返ってきません。でも、これでフライ人口が一人でも増えれば嬉しいので、そっと見守ることにしました。

このところ急速に気温が上昇して、山あいも初夏のような陽気になっています。水生昆虫たちの羽化が一層盛んになり、ついで陸生昆虫たちの活動も本格的に始まります。生命感あふれる渓でのフライフィッシングは、筆者にとって一年で一番幸せな季節です。