■魚はどこにいる? 「釣り人がいるところが好ポイント」

毛ばり、ルアー共用の巴川(大和田川)のゴボキ堰堤下流の流れ。堰堤上部からしばらくルアー専用となります

 朝6時半の時点での気温は4℃、水温は8.7℃でしたが、昼を過ぎ気温はすでに18℃まで達していました。川沿いに車道が走っていますので、駐車スペースから数百メートルほど釣り上がっては退渓、道路を歩いて車に戻ってという行動を繰り返すこと数回。しかし、一切魚影を見ることはありません。魚を求めてプールはもちろん、流れのなかを読み解くように凝視する時間が続きます。

 キャッチ&リリースのフィールドでは「魚は見えるけどセレクティブ」 そんなイメージが強いのですが、これだけ広大な範囲ではそうもいかないのでしょう。飛んでいくカワウの姿につい、彼らのせいにしたくもなります。途中出会った釣り人たちも首を傾げて同じ思いのようでした。

※ その後、追加放流されたようで、魚影もライズもあり釣果がずいぶん上がっているようです。

 ふと思い立って、道中に見かけた車が3台停まっていた入渓点へ向かってみました。当然その上流には釣り人も入っており、敬遠したのですが「ひょっとして釣れるから集中しているのかも」と思い直してみたのです。

■苦戦して釣り上げた美しいアマゴにうっとり

流れの筋が絡み合うポイント。小場所ですが、ここにアマゴが入っていました

 すでに車は一台もなく先行者たちはとっくに退渓した様子。一縷の望みを胸に丁寧に釣り上がっていきます。先ほど道からフライを結び変えている釣り人を見かけたあたりまで来ました。2つの流れが絡まるように合わさった流心、その底石の間の隙間からいきなりアマゴが浮上してきました。ようやく出会えた魚です。25cmくらいありそうな良型に見えました。

 一瞬フライに触ったような気もしたのですが、少し時間をおけばまだチャンスはあると自分に言い聞かせ、20分ほど待ちます。悩んだのですがフライを変えることにしました。先ほど反応したCDCソラックスダン(カゲロウを模したドライフライの一種)を少しサイズダウンして結びました。

 期待を込めてそっとフライを流します。出ません……。数度流し方を変えつつ様子をみますが、揺らめく魚影はありません。さらに別のパターンもいくつか試してみましたが、水面が割れることはありませんでした。そこで最初のフライに戻し、また20分待ってから流すこと2度、3度。先ほどより素早く浮上してきた魚影が反転する瞬間に合わせました。

小ぶりでも元気なアマゴの姿を見られてよかった
CDCソラックスダン。定番だけにサイズやカラー、巻き方などバリエーションを用意していると心強いです

 少し下流に走ったものの、うまくネットに収まったのはヒレの張った美しいアマゴでした。体側の朱点はまるで桜の花びらを散りばめたようで雅やか。花見気分の続きのようにうっとりとさせられます。ただ、サイズは20cm程度とずいぶんと小さくなっています。「逃した魚は……」ってやつですね(今回は釣りましたが)。

 その後も要領を得たのでポツポツと魚を出せるようになりました。底にべったりと張り付いたように定位しているような魚たち。これでは魚影が見えないはずです。「そこに釣りたい魚がいる」 そう思えるだけで、ウキウキした気分で釣りを続けられます。まだ歌い慣れないウグイスの声が渓にこだましていました。自分の釣りの引き出しが一つ増えた、そんな釣行になった気がします。