■夕方、涼しくなると一気に高活性!

釣れないのはいいとしても、この暑さのなか頑張り続けても苦行でしかありません。イブニングに期待することにして、残り150mほどを残し、風通しのいい日陰でしばし休むことにしました。
昼寝から目覚めると、先ほどまでの暑さが嘘のように涼しくなっていました。気温は24℃、水温は変わらずですが、気温が下がっただけでゲーターから染みてくる水に冷たさを感じます。
そのおかげでしょうか。それともちょうど魚が濃い区間に入ったのか、漂うフライにヤマメたちがポツポツと反応するようになりました。20cmに届かないようなサイズですし、フッキングがあまくてバラす割合も多いですが、とにかく魚の顔が見られるだけで嬉しいものです。とはいっても、フィーディングレーン(魚が捕食するための流れの筋)から少しでも外れたり、ドリフトの仕方が悪いとまったく反応してくれません。わずか数センチの違いでもお眼鏡にかなわないと、水面は静まり返ったままです。
苔むした護岸の際、いかにもヤマメが好みそうな流れでした。徐々にラインを伸ばしつつ、そっとフライを落とします。水面に揺れるフライがすっと消えました。

しっかりと集中できていたので間髪入れずに合わせ、主導権を握らせないよう、プレッシャーをかけて引き寄せていきます。かなり強い引きに大物を確信しますが、ラインを出すことなくそのまま引き寄せてネットへと導きました。夢中になっていたので一瞬の出来事でしたが、後からやり取りの実感がじわじわと込み上げてきました。

尺には1cmほど足りないヤマメ。獰猛さを感じさせる顔つき、金色に縁取られたつぶらな眼やどこか金属光沢を思わせるような鰓蓋の(えらぶた)の鈍い輝きに凄みがあります。流線型の魚体は、きめ細やかな鱗のきらめきが角度によって七変化、群青のパーマークが浮かび上がったかと思うと、赤銅色を帯びた渋さや艶やかな薄紅色へと見ていて眩暈がしそうな美しさです。

さて、いよいよクライマックス。前回訪れたときにも素晴らしいヤマメが飛び出したポイントへやってきました。ドキドキしながらフライを流すと、初投でド派手な水飛沫が上がりました。激しくローリングしながら抗うのは20センチ半ばの艶やかなヤマメ。狙っていた魚ではありませんが、筆者の巻いた(選んだ)フライに出てきてくれたことに感謝するばかりです。
短い時間でしたが、存分に渓流フライフィッシングの醍醐味を味わえた後半戦。一番の良型をバラすことなくキャッチできたのは、我ながら僥倖だったと思います。河原にはハギの花が咲きだしていました。季節は着実に進んでいます。人間にも自然にも一日も早くまとまった雨が必要ですね。
※ 釣行日、2025年8月上旬。