今年は紅葉の当たり年だそうで、各地を訪れた山仲間から美しく色づいた山々の写真が送られてきます。
首都圏も11月に入って寒い日が続き、紅葉の色づきラインもだいぶ標高を落としてきました。山にもよりますが、現在は1,000〜1,500mくらいが見頃を迎えているようです。
ちょうど、この標高帯を跨ぐように歩ける首都圏近郊の穴場ルート「牛の寝通り」の紅葉具合をレポートします。
◼️広葉樹の美しい紅葉が見られる緩やかな稜線歩き
牛の寝通りとは、大菩薩嶺の南に位置する石丸峠から東に向かって延びる稜線のこと。遠くから見ると寝ている牛の背中のように見えるため、この名が付いたと言われています。
この時期に牛の寝通りをおすすめしたい理由は、緩やかで歩きやすい稜線上の至るところで広葉樹の美しい紅葉が見られることです。標高1,935mの石丸峠から標高1,232mの松姫峠に至るまで、ブナをはじめとする豊かな広葉樹の森が広がっているので、どこかしらの標高帯で紅葉を当てることができます。
上日川峠を起点に下り基調で歩くルート取りも気持ちが良いのですが、今回は日向沢登山口から小菅大菩薩道を登り、牛の寝通りから大マテイ山を経由して小菅村へと下りる、歩き応え抜群の日帰りルートを紹介します。
◼️かつての要路「小菅大菩薩道」をゆく
起点は小菅村の集落を抜けて、林道のドン詰きにある日向沢登山口。公共交通機関は通っていないので、マイカーかタクシーでのアクセスとなります。取材陣は車を1台、下山口に設定した小菅村にデポして、マイカーで向かいました。
うっすらと紅葉し始めていた登山口の標高は1,047m。「小菅大菩薩道」という古道を使って、大菩薩峠(標高1,902m)まで登っていきます。標高1,300mを超えたあたりから、徐々に森の色彩が豊かになってきました。
小菅大菩薩道は、江戸時代以前から明治まで、豊かな甲府の物資を丹波、小菅へと運ぶための重要な道でした。ニワタシバ(荷渡場)、フルコンバ(古木場)など、ルート上の地名に往時の名残が見てとれます。笹子峠越えの甲州街道が存在しなかった当時は、“富士講”と呼ばれる富士山への登山客も、小菅村からこの道を使って甲府に入っていたそうです。
現在、大菩薩嶺へは上日川峠から登るルートが一般的なため、利用者が少ないマイナーなルートになっていますが、山深いところにしっかりした石垣が組まれていたりと、往時の面影が残る登山道は今も非常に歩きやすい。豊かな紅葉樹の森の中、じわじわと緩やかに標高を上げていく気持ちのいいルートです。