自然景観や野生の動植物、歴史文化など、日本の宝である国立公園は現在国内に35か所あるが、その第一号となるのが、昭和9年に指定された鹿児島県の霧島国立公園。現在は、錦江湾エリアを含めた広範囲が「霧島錦江湾国立公園」として指定されている。公園南部の指宿市には開聞岳(かいもんだけ)が、北部の霧島市には霧島連山がそびえ、どちらも鹿児島県が誇る日本百名山として存在感を放っている。登山好きなら一度は登ってみたいこの2座を、はしごして登ってきたレポートをお届けしていこう。

■個性が際立つ指宿市の名峰「開聞岳」

きれいな円錐形をしている開聞岳。その形から「薩摩富士」の別名もある

 まずは、開聞岳の登山レポートから紹介。鹿児島県の薩摩半島最南端に位置するこの山は、指宿市内のあちこちから見える街のシンボル的な存在だ。標高924mと日本百名山としては高いほうではないが、きれいな円錐形のフォルム、山全体が海にせり出すロケーションなど、名峰たる個性にあふれている。

 麓の「かいもん山麓ふれあい公園」に登山口があり、車の場合は管理棟のすぐ隣りの駐車場を利用。列車の場合は、JR開聞駅から徒歩20分。もしくは、指宿駅からバスで開聞岳登山口で下車し、徒歩でアクセスする方法がある。

 

開聞岳へのアクセス

■まずは展望台までゆっくり登っていく

2合目から森の中をひたすら登る本格的な登山道がスタート

 開聞岳は標高1,000mに満たない山とはいえ、海岸のすぐそばにそびえているため、高低差が900m近くもあって登りごたえがある。北麓からピークに向かってらせん状に登山道が続き、コース長は4,668m。「かいもん山麓ふれあい公園」のパークゴルフ場を抜け、2合目から本格的な登山道がはじまり、最初のうちは道が掘れた峡谷のようなルートを進んでいく。

ルートの大半が森の中。本州の山とは違った南国らしい植生がめずらしい

 木々が生い茂る密林のような道を、北麓から南麓の海側へと山の斜面をトラバースするように移動しながら1時間ほど進んでいくと、5合目の展望台にたどり着く。長崎鼻や佐多岬などが一望できる開放的な場所に、休憩にちょうどいいテラスが設置されている。この先から登りがきつくなるので、ゆっくり休憩をとって山頂を目指していく。

展望台がある5合目で景色を眺めながらしばし休憩
展望台からの眺め。海が近くて開放感がある

■徐々に標高をあげていく

登り進めると岩が多くなり、勾配がきつくなっていく

 5合目から先は徐々に不安定な岩場など、手を使って登るような場所が増えてくる。登山道のほとんどが樹林帯で展望はないが、各ポイントに何合目なのか分かる標識が設置されているので、山頂が近づいている目安になる。また、木々の間からチラチラと東シナ海が見え、7.1合目付近には種子島や屋久島が見えるポイントもある。山伏たちの修行場として使われていたという「仙人洞」という岩の間にできた洞窟もあり、ところどころにちょっとした見どころがあるのが楽しい。

開聞岳が噴火した際に溶岩がせりあがってできたという「仙人洞」
急なハシゴは9合目の難所。手も使って体を安定させながらゆっくりと登っていく
鳥居と小さな祠が祀られている御嶽神社。薩摩一の宮といわれる枚聞神社の奥宮だ

 8合目を過ぎると岩場が増えて勾配もきつくなるため、バテないように適度に休憩しながらペースを保っていく。9合目のハシゴを越えたらピークはもうすぐだ。山頂直下までくると、開聞岳をご神体とする枚聞神社(ひらききじんじゃ)の奥宮となる御嶽神社が祀られている。さらに進むといきなり森を抜け、空が広がり開聞岳のピークに飛び出す。

■大パノラマの開聞岳山頂

あいにくの空模様で山頂からの展望は望めなかったが、標高924mの道標で登頂した感動をかみしめる

 大きな岩が転がり、低木に囲まれた山頂はさえぎる物がないパノラマの大展望。という予定だったが、当日は山頂付近だけ雲がかかり視界は真っ白。ガスが晴れるのを願ってしばらく粘ったが、残念ながら展望を見ることはかなわなかった。とはいえ、山頂を示す標高924mの道標を目にすると「登ってきたぞ」というやり遂げた満足感を味わえる。

 晴れた日の開聞岳山頂は、錦江湾や噴煙たなびく桜島、雄大な池田湖などが一望できる絶景が広がっている。また、空気が澄んでいれば霧島連山や屋久島まで見渡せるという。

天気の良い日の開聞岳山頂。手前の大きな湖が池田湖、その奥に錦江湾が広がり左奥に桜島が見える
開聞岳の詳しい登山情報はこちら

<おすすめルート>
かいもん山麓ふれあい公園 → 開聞岳 → かいもん山麓ふれあい公園
(所要時間:約6時間)