初冠雪や初雪の便りが続々と届く季節となりました。それに伴い、カモをはじめとする冬鳥たちも少しずつ増えてきています。一方、高山から下りてきた紅葉前線も低山まで達しつつあり、人里を華やかに包んでいます。
山形県鶴岡市にある高館山(273.3m)と八森山(229m)もそのひとつ。江戸時代から森林の伐採が制限されていたため、ブナやケヤキなどの自然林が豊かに広がっています。そのため秋になると赤や黄色に鮮やかに色づくのです。その頃、麓の大山上池・下池には、多くの水鳥が飛来し羽を休めます。
■「大山上池・下池」とコハクチョウ
大山上池・下池は、江戸時代から続く農業用ため池です。面積は上池が15ha、下池が24haあり、周辺は水田・湿地・住宅街などで囲まれています。夏にはハスが咲き誇り、秋にはレンコンの収穫が行われている自然豊かな池です。
冬になると、ロシアや中国北東部から多くの水鳥たちが飛来します。以前は、厳しい寒さにより池が結氷していたことからコハクチョウの飛来はなかったそうです。しかし、地球温暖化が世界的な課題となった1980年代後半頃からコハクチョウが訪れるようになり、今では多い時には5,000羽を超えるようになりました。
水鳥が増えたことには、利水の仕方が変化し池の水位が高くなったこと、市民の方々の理解など複数の理由が重なっているようですが、地球温暖化が水鳥の楽園をつくる要因になったとは皮肉なものです。安定してガンやカモ類が増えるようになり、2008年10月には、「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(ラムサール条約)」にも山形県で初めて登録されました。尾瀬やメガソーラー建設で揺れる釧路湿原なども登録されていることからわかるように、非常に貴重な湿原と認められているのです。
■湖面を埋め尽くす4000の白い点
間もなく日の出となる6時前。池に到着すると、池に白い霧が立ち込め、幻想的な風景を作り出していました。早起きのコハクチョウは「コー、コー」とよく響く声で鳴きかわしています。訪れた時には、上池・下池を合わせ4,000羽を超えるコハクチョウが浮かんでいました。10月下旬から11月にかけてが、一番多くなる頃とのこと。夜の間、コハクチョウは安全な池で過ごします。また、遠くにゴマ粒のように見えるのはカモの仲間たち。20,000羽を超える大群です。
これら多くの水鳥を温かく迎え入れることができる上池・下池の懐の大きさを感じました。