■上流は渇水、高水温…… のんびりと浮上してきたイワナ

遡行は楽ですが、元気のない水の流れを見ているとどこか悲しくなります
のんびりと浮上して、疑うことなくフライを咥えてくれたイワナ

 一度退渓して車で上流へ移動しました。間には大きな堰堤があるのですが、そこから上にはヤマメに変わってイワナが棲んでいます。

 はたして、入渓点近くの橋の上からそっと流れを覗くと……。渇水です。平水より70〜80cmは水位が下がっていました。さらに上流には水力発電の施設があるので、その影響でしょうか。普段は水中に没している足がかりもすっかり露呈しており、苦労して越えるような難所も楽に通過できてしまいます。水に勢いがない渓は元気がない気がして、遡行していてもどこか生気を感じません。

 気温は26℃、水温は19.1℃で泳げそうなくらいの温かさです。細々と流れる水は深いところでも腹上程度、ほとんどは脛くらい。透明度の高い水のおかげで川床まで見通せますが、どこにもイワナの姿はありません。

 きっとエゴ、岩陰に隠れているとは思うのですが、どうにも気になってしまいます。落ち込みの泡下などを狙ってフライを送り込みますが反応はありません。

 ほとんど流れのなくなっている大きな淵になんとなくフライを浮かべていました。ゆっくりと漂うフライは1mを切ったくらいまでやってきてプカプカと浮かんでいます。どうしたものか、引き返そうかと逡巡していると、足下の大岩の陰からのんびりと浮上してきた魚影が、躊躇することなくゆっくりとフライを咥え、ゆらりと反転しました。

 まるで疑うことのないそぶりに、逆にこちらがびっくりしてしまいます。うっかり見とれていてやや合わせるのが遅くなりましたが、フライはしっかりと口元にフッキングしています。力強く抗う脈動を感じつつ、大岩を回り込んで水際でネットに導きました。

 微妙に翡翠色も織り交ぜたような透明感がある魚体。腹はほんのりと黄色味を帯びています。元気そうなイワナの姿にひとまず安堵し、これ以上の深入りは蛇足かと満足して渓を後にしました。