■暑さからも逃げられる!? 堰堤の釣り
高いコンクリートの壁に沿って落ちる流れが、10mくらいの奥行きのプールを作っています。行く手を阻む巨大な堰堤です。人工物を目の前にしての釣りは気分が乗らないのですが、こと渇水のタイミングでは魚たちが溜まっている堰堤のプールは見逃せません。
細かく砕かれた水飛沫が浮遊していて、近寄るとミストが優しく身を包んでくれます。程よく涼しい、癒しの空間が広がっていました。
大きめのドライフライを結び、ちょうどいい位置にある大きな岩の陰に隠れながらラインを伸ばして様子を見ます。
さざ波立つ水面、浮上してくるのがよくわかるほど大きなイワナたち。次々とフライを見に来ては……。身を翻して引き返していきます。しばらくその様子を楽しんでいると、魚たちはまったく反応しなくなりました。ここまで来る釣り人はそう多くないはずですが、完全に見切られているようでした。
浮かせたフライに大物が飛び出す瞬間を楽しみにしていたのですが、諦めるしかありません。ストリーマー(フライの種類)を結び水面下をゆっくり引いてみます。
ラインが吸い込まれるような動きに合わせると、鈍いアタリとともに重みが伝わってきます。脈動する手応えに自分の心臓の鼓動もシンクロするようで、期待に胸が高まります。この後も釣るチャンスを残したくて、なるべく暴れさせないように心がけていたのですが、広いプールを縦横無尽に走り回るイワナは思ったとおりにコントロールできません。
無事にランディングしたイワナは、光の加減で黄金色にも見えます。もっと大きい魚もいましたが、丸々とした魚体にすっかり満足しました。
暑さはいつまで続くのでしょうか。少し前までは活発だったアブたちもほとんど姿を見なくなりました。萩の花やススキの穂が道端を彩って、着実に季節は進んで秋の気配は漂っています。あと何回、渓へ足を運べるだろうか。そんなことを思いながら流れを後にしました。