■イラストに描いたようなアマゴが!

低くなった秋の光が渓へと差し込むと、明暗のコントラストが際立ちます

 翌日はアマゴを狙って、同漁協管内の違う川へ入りました。芝川より細い渓流で、開けた里川の風情もありつつ、ところどころ狭まった深い谷間もある流れです。毎年同じ時期に訪れていますが、シーズン最後のこの季節は魚たちがスレていて簡単には釣れません。

 上流に先行者がいたので、ある程度下ってから入渓しました。水温は16.1℃。魚影はあるものの、案の定、神経質な魚たちはなかなかフライを咥えてくれません。それでも、澄んだ流れから浮上してきては身を翻すアマゴたちに一喜一憂しながら過ごす時間は至福のときです。太陽が優しく降り注ぐなか、ロッドを振りラインを伸ばしているだけで幸福感に包まれます。

 わずかなライズ(水面付近での捕食行動の表れ)がありました。いったん下がって心を落ち着かせながら、岩陰から様子を窺います。ライズは徐々に大胆になってきている気がしました。ティペット(ハリス)をさらに細くして、ラインの影で魚を驚かさないような角度でそっとフライを落としました。水面が割れ、勢いよく飛び出した魚の口には、果たして、しっかりとハリが掛かっていました。

見目麗しいアマゴ。小ぶりでしたが、シーズンのフィナーレを飾るのに十分な一匹でした

 慎重に手元に寄せた貴重な一匹。小ぶりなアマゴですが、まるでイラストに描いたようなくっきりとしたパーマークに朱点が散りばめられ、ピンと張ったヒレ先はほんのりと色づいています。秋の光にきらめく流れと相まって一層美しく、うっとりと見入ってしまいました。

 川面に飛び交うトンボたちが止まりたそうに、竿先のあたりでホバリングしています。瀬音に虫の音が控えめに混ざり合うハーモニーが耳に心地よく、終わりゆくシーズンを噛み締めるよう、ゆっくりと釣り上がりました。