異常とも思われる今年の夏の暑さ。ぐったりしてしまいがちな毎日ですが、アウトドア人間は、やはり冷房の効いた部屋に籠りっぱなしよりは、汗だくだくでもちょっとは外を歩きたいもの。低山を登るのには暑すぎるので、朝夕に公園散歩や軽いハイキングを楽しむ方も少なくないでしょう。

 そんな時、道端の葉っぱや手すりの上に、ちょっと怪しいハンターが目を光らせるのに気づいたことはないでしょうか。

■スズメバチを凌ぐ「最強昆虫」と言われるムシヒキアブ

飛んでいる昆虫に襲いかかり、その体液を吸うチャイロオオイシアブ
散策路の階段で獲物を待つシオヤアブ

 そのハンターが、ムシヒキアブです。アブというと、人の血を吸うのでは? と思う方もいらっしゃると思います。しかし、「虫引き」という名前通り、虫を捕まえるのが専門。人には害はありませんのでご安心ください。

 ムシヒキアブは、飛んでいる虫なら何でも捕まえてしまうため、「最強昆虫」として知られています。例えば、獰猛なスズメバチやトンボの王者オニヤンマ、さらにはカブトムシやクワガタムシにまで襲いかかり、太いストロー状の口をブスリと刺して体液を吸い取るというのです。

オスの腹部先端には、白いポンポンが

 ムシヒキアブには、オオイシアブやアオメアブなど様々な種類がいますが、これからの季節の主役は、シオヤアブです。3cmくらいの大きさで、オスの腹部先端には、塩のような真っ白いふわふわした毛の束があるのが特徴です。皆さんの中にも見かけたことのある方がいらっしゃることでしょう。それくらい、私たちの身近な場所で生活をしています。

■えっ、そこ!?  寝ぐせが名前の由来とは!

ハエの仲間を捕らえて体液を吸っているムシヒキアブ
目の後ろの“寝ぐせ”カールに注目!

 ある時、ハエの仲間を捕まえているムシヒキアブを見つけました。大柄なオオイシアブやシオヤアブとは違い、少しスリムな体つきです。この虫の名前は、マガリケムシヒキ。「曲がり毛」というおもしろい名前ですが、それは、大きな目の後ろから生えている毛が、寝ぐせのように前方にカールをしていることからついているのです。目を凝らすようにして見ないとわからないような特徴を名前にしてしまうとは、命名した人のお茶目なセンスが光ります。