■あまりに薄い反応、ようやく飛び出した黒いイワナ
いたるところに張り巡らされたクモの巣が先行者の不在を教えてくれます。しかし、このクモの糸は釣りの天敵です。粘り気があって強度があるため、ラインやロッドにねっとりくっついて、スムーズなラインの流れを妨げるのです。せっかく巣を作ったクモにも申し訳ないですね。
慎重にアプローチしますが、どのポイントからもまったく魚の反応を得られません。2時間かけて500mほどの距離を釣り上がりました。
水飛沫を上げて落ちる勢いのある流れの脇、そこだけ妙に暗い水の色をした反転流がぐるぐると回っていました。ここまで全く魚信がなかったので、半ば諦めたような気持ちでフライを落とした瞬間、すっとフライが消えました! ワンテンポ遅れて合わせたラインに確かな魚の鼓動が伝わります。バラさないように慎重にネットに招き入れたイワナは、体側の斑点と腹の黄色さが目立つ黒く艶かしい、野趣溢れた風貌でした。
帰路、見事に発達した入道雲が西日に赤く染まっていました。今夜も一雨来そうです。いよいよ(本州の一般的な自然河川の)渓流シーズンもラストスパートです。残された日数と行きたい渓を照らし合わせて行き先を吟味しつつ、秋の釣行に思いを馳せています。