寒さもやわらぎ、そろそろ春を探しに外へ出かけたくなる人も多いのではないだろうか。今回紹介するのは、栃木県栃木市と佐野市にまたがる新・花の百名山「三毳山(みかもやま・標高229m)」だ。3月を迎えると「春の妖精(スプリング・エフェメラル)」たちが山を彩る、花の楽園となる。
1年を通じてさまざまな花が見られる人気の山だが、春の主役といえば、やはり「カタクリ」。早春に花を咲かせ、初夏には地上から姿を消してしまうその儚さから「春の妖精」と呼ばれる。
見頃となる3月中旬から下旬にかけては、群生地のカタクリがいっせいに開花し、斜面一面を鮮やかな紫に染め上げる。その美しくも幻想的な景色こそが、三毳山が「新・花の百名山」に選出されている所以だ。
今回は、登山初級者の方でも気軽に楽しめる、春の魅力が詰まった三毳山のお花見登山レポをお届けする。
■美しい春の妖精が舞う山へ
三毳山とカタクリを最短距離で楽しむなら、山の北側にある「かたくりの里駐車場」を利用し、群生地を満喫してから山頂を目指すコースが一般的だ。往復1時間半もかからない手軽さが魅力だが、このコースの気をつける点はアクセスの難しさ。非常に人気が高いため駐車場はすぐに満車となり、近くにバス停などもない。
そこで筆者がおすすめしたいのは、「みかも山公園東口」を起点に山頂を経由して「かたくりの里」を目指すコースだ。
「みかも山公園東口駐車場」は200台以上駐められるほか、JR両毛線・栃木駅や岩船駅から東口の横にある「とちぎ花センター前」バス停まで路線バスが運行しており、公共交通機関でのアクセスも良好だ。
駐車場の利用時間は3月~9月は、8時30分~18時30分まで。筆者が訪れた際も開門直後の8時30分には、続々と車が来場し、この山の人気の高さを実感した。
無事に駐車場を確保できてひと安心……といきたいところだが、カタクリ鑑賞にはひとつ問題がある。カタクリは晴れて気温が上がる日中(11時~15時頃)の短い時間しか咲かないのだ。朝早くに出発すると、群生地に着くころにはまだ花が閉じている可能性があるのだが、これこそが「東口スタート」をおすすめするもう一つの理由につながる。
■山麓で春を探そう!
三毳山の春を彩る花はカタクリだけではない。カタクリの開花までの時間を有効に使い、山麓に広がる春を満喫していこう。
まずは春の花の代名詞とも言える「桜」だが、東口駐車場近くには河津桜が植えられており、3月上旬から中旬にかけて見頃を迎える。ソメイヨシノよりも一足早く、青空に映えるピンク色の花が目を楽しませてくれる。また、朝の早い時間はメジロたちの食事タイム。桜の蜜を求めて花から花へと飛び回る愛らしい姿を、桜を見に訪れた人たちが笑顔で見守っていた。
さらに、東口駐車場から「とちぎ花センター」の脇を抜けて少し登ると、ミツマタの群生地が現れる。その名の通り三本に分かれた枝の先に、蜂の巣のような黄色い花を咲かせるミツマタは、甘い香りで春の訪れを教えてくれる。ぽわぽわとした丸いフォルムが風に揺れる姿は、なんとも心なごむ光景だ。
足元に目をやれば、他にも小さな野の花が顔を出している。カタクリが目覚めるのを待ちながら、自分だけのお気に入りの春を探して歩くのも、このルートの醍醐味だ。
■低山でも侮れない! 三毳山山頂からのパノラマ
東口駐車場から三毳山山頂までは約40分。ハイキングコースはよく整備されていて危険箇所などはないが、分岐が多いので道迷いには注意が必要だ。迷いそうになったら地図や登山アプリで現在地を確認しながら進むようにしよう。
山腹の樹林帯の中は眺望が限られるものの、尾根に出れば木々の隙間から麓の街並みや遠くの山々が姿をのぞかせる。
期待に胸を膨らませて到着した山頂からは、大きく西側に眺望が開けている。雪化粧した日光男体山や日光白根山、赤城山の雄姿は圧巻だ。条件がよければ、榛名山や浅間山まで見渡せる。
山頂スペースは限られているため、景色は譲り合って楽しむようにしよう。「もっとパノラマを堪能したい!」という方は、南にある「三毳神社」に足を延ばすのもおすすめ。関東平野を一望するダイナミックな景色が待っている。