■盛んなライズ! パラダイスのような高原のプール

少し上流に移動して、急斜面を降りて入渓しました。前後にプールがあるお気に入りのポイントです。反転流の底に沈む黒い魚影を確認しました。気づかれないように屈みながらドライフライを結びます。さっそく飛び出した良型イワナに合わせるもすっぽ抜け、直前で偽物だと見切られたようでした。
ハリには触れていなかったようなので、今度はウェットフライにシステムを変え、水面直下をゆらゆらと漂わせて誘ってみます。浮上させるようにスッと逆引きした瞬間、たしかな手応えとともに丸々としたイワナがフライを咥えてくれました。
その下手のプールを見ると、散発的にライズが起こっていました。慎重に身を潜めながら河原を移動してフライを結び換え、ライズの上流へとそっとフライを落とします。泡と一緒に漂うフライが水飛沫と共に消えました。流れの底から鋭く飛び出すイワナたちはまるでヤマメを相手にしているかのよう。型こそ20cm前半でも、泳力に優れており力強くロッドを絞り込みます。
釣れた魚は写真を撮って同じプールに返しましたが、その後もライズは止むことなく、むしろ激しさを増していきます。数も多いので、ドラグ(フライの不自然な流れ方)に気を付けて流しさえすれば、どこからでもイワナたちが飛び出してくるような感じで、まるでパラダイスのよう。その様子を確認できただけで十分です。まだまだ釣れそうでしたが、数匹釣ってすっかり満足してその場を後にしました。
ここは林道が脇を走るアクセスのいい高原リゾート地です。放流もされておらず、キャッチ&リリースでもなく、それでいて元気な原種イワナたちが数多く泳ぐ川。筆者が訪れるようになってからでも30年あまり。いつまでもこの環境が続くように願いつつ、ときおり足を運んで見守っています。