■うっとりするほど美しい渓! 秋の気配も

美しい渓でラインを伸ばす至福のとき。緑がどこか赤味を帯びているのは、朝だからだけではないでしょう

 3日目、妙に冷え込んだ朝でした。林道から地形図と目視で入退渓の場所をチェックし、比較的容易そうな斜面を下り河原に立ちました。谷間に光が差し込むと川面から霧が立ち上り、幻想的な雰囲気です。その時の気温は20℃、水温は13.5℃と暑さに慣れた体には肌寒く、ウェーダーを履こうかと悩んだくらいでした。

あいにくサイズは伸びませんでしたが、野生味溢れるイワナも出てきてくれました

 何度か小さい魚たちが顔を出しますが、疑心暗鬼なのか、なかなかハリにかかりません。いつも以上に慎重に、わずかでも不自然な動きをしないようにフライを流す工夫をすると、ようやくフッキングするように。(稚魚)放流されたと思われるニッコウイワナがほとんどでしたが、ヤマトイワナの血が濃そうな魚も釣ることができました。

美しい渓によく似合う宝石のようなアマゴ

 昼過ぎに退渓した後、昨日入った場所へ移動して、おさらいするようにもう一度。魚の付き場を把握しているからでしょうか、同じ川とは思えないくらい好反応です。アマゴが優勢な感じでイワナも混ざります。いずれにせよ、渇水のせいで速い流れの芯に潜んでいるので、集中を強いられスリリングな釣りでした。

まるでカラメルを焦がしたような甘い香りを漂わせるカツラ

 退渓しようと斜面に取り付くと、甘く芳ばしい香りが鼻をくすぐりました。足元には黄色い葉がまばらに落ちています。見上げるとカツラの木が枝を広げていました。わずかに色づき出しています。山の秋はすぐそこまで来ているようです。深く深呼吸して、渓を後にしました。

帰り道は長峰峠を越えて。長野県に入ってから九蔵峠の手前より、振り返って見た御嶽山。高原の風にたなびくススキの穂に秋の訪れを感じます