JR大阪駅から電車で30分。大阪・四條畷市(しじょうなわてし)にある飯盛山(いいもりやま)は、アクセスのよさと絶景が魅力の、知る人ぞ知る低山ハイキングの名所だ。整備された登山道には、遊び心ある仕掛けや歴史ある風景が広がり、自然に癒されながら登山を楽しめる。登山初心者やファミリーにもおすすめの飯盛山を紹介する。

■駅からのアクセスもよく、老若男女に愛される飯盛山

飯盛山山頂への登山道

 大阪・四條畷市と大東市(だいとうし)の市境に位置する「飯盛山」は、標高314mほどの低山ながら、驚くほどすばらしい眺望と癒しに満ちた山である。その名の由来は、文字通り「飯を盛ったような山容」に由来する。

 JR学研都市線・四條畷駅から登山口まで歩いてアクセスできることもあり、地元の方を中心に幅広い層に親しまれている。筆者が訪れたのは、ちょうどゴールデンウィーク明けの平日であったが、年配のハイカーや家族連れの姿も多く、にぎわいを見せていた。

 今回、筆者が歩いたのは四條畷駅から、権現川(ごんげんがわ)沿いに山頂を目指す約4.4kmのルート。山頂までの所要時間はおよそ2時間。このコースの魅力は歩きやすさだけでなく、道中には、心を和ませてくれる数々の仕掛けが待っている。

■童話のような道を歩く

権現川沿いの広場に設置されている時計やカレンダー

 駅を出て四条畷神社の大きな鳥居をくぐる。神社まで真っすぐな参道が市街地を貫いている。参道を歩き、四條畷神社の前を通り過ぎて、権現川ハイキングコースへ。権現川の清流沿いを歩き、ゆるやかに標高を上げていく。水の音が耳に心地よく、木漏れ日が美しい。

 ハイキングコース沿いには、手作りのベンチやテーブル、さらにはししおどしまで設置されている。しばらく進むと、小さな広場が現れる。ここには洋服掛けや鏡、時計、カレンダーまで。まるで童話の世界に迷い込んだような雰囲気だ。

 同行していた20代の娘も「ここ、かわいすぎる! まるで不思議の国のアリスの世界みたい」と撮影に夢中になっていた。

ハイキングの憩いの場となっている、滝谷楠水の場(たきだになんすいのば)

 この場所には「滝谷楠水の場(たきだになんすいのば)」と呼ばれる水場があり、コップも用意されている。筆者はここで、山頂で淹れるコーヒー用の水を汲むことにした。

権現川を離れて、この広場から飯盛山山頂方面へ向かう

 本格的な登山道は、この広場からはじまる。川沿いを離れて登りはじめると、登山道脇に、木彫りの動物たちが現れ、まるで森の案内人のように迎えてくれた。

 童話の世界に入り込んだ娘は、大きな木に抱きついて、耳をすませていた。「木って、あったかい。それにすごくいい匂いがする」と目を閉じて呟いた。植物は、害虫などから守るために「フィトンチッド」という揮発性物質を発する。森林セラピーでも使われているのだが、そのことを知らない娘も、癒し効果を五感で感じているようだ。