■滝壺の主に期待!

 それほど広くないものの、滝壺もあります。色気ある光景に誘われるように、おそらく魚留となるその滝へ、そっと近寄りました。いかにも大物が入っていそうです。期待が高まりますが、滝から放たれる風圧でフライラインが押し返され、さらにミストが視界を妨げます。涼しく快適だったのは最初だけ。冷気はあっという間に体温を奪っていきます。ジャケットを羽織ってから開始しなかったのを後悔しつつ、しばらく粘りましたが、釣果はありませんでした。

支流側は高低差が大きく岩や倒木が転がり荒れた様子でした

 少し戻って1:1の分岐から支流の方を少し覗いてみました。岩がゴロゴロと転がり、その隙間からは細いながらも途切れることなく水が流れ出しています。一段上がってみると、山肌をびっしりと覆う森、崩壊してできた斜面にはミズ(ウワバミソウ)の群落が生い茂っていました。

 「クマが好きそうな場所だな」と思い、腰にぶら下げているカウンターアソルト(クマ撃退スプレー)を確認します。岩に足を置いたつもりが、妙に柔らかい感触……。糞、しかもクマの落としものです。周囲の草をたらふく食べているのでしょう、緑色のまだ新しいものです。このあたりが潮時でしょう。周囲を警戒しつつ、ゆっくりと渓を下りました。